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「何か、もったいない気がしてさ」
「あきお兄にも言われた」
「彰臣さん元気? 美容師さんになるんでしょ? 担当して欲しいなあ」
「言っておくけど、それ随分先だよ」
最初は色んな美容師さんについて接客や技術を学び、掃除や備品補充などの雑用と店舗がしまった後の練習や機材の講習など修行の日々が続くらしい。
「分かってるって。彰臣さんってイケメンだけど気さくで鼻につかないし、指先綺麗だから素敵だなって」
「指先〜? 確かにすらっとしている方だと思うけど……」
兄は工具等を使う作業は苦手なはずで、美容師になると聞いた時はハサミを首筋にブッ刺しそうで私なら頼まれても断るだろう。
「何か、エロいよね」
美香は恍惚とした表情で言った。その瞬間、梱包されたグラビアアイドルの写真集が頭をよぎる。
「いや、妹の口からは何とも言い難い」
「ごめん、言い方間違った。色気があるって言いたかったんだわ」
「色気なんてある?」
「妹の敦子ちゃんには分からないかもね」
なぜか得意げに笑った。
「一生分からなくて良いわ……」
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