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事務所から、歩いて駅に向かう蓮と穏は、横断歩道で信号待ちをしている時蓮が話し掛ける。
「穏さん」
「何?蓮くん」
「何で、『気分転換に買い物』なんて、思い立ったんですか?
やっぱり、上層部で⎯⎯」
「単なる思い付き」
穏の言葉を遮り、被せる様に言い放った。
「えっ…でも⎯⎯」
「上層部とは関係無い。
ただ何となく、買い物に行きたかっただけ」
やっぱり何か奇怪しい⎯⎯。
いつもの笑顔が⎯⎯言葉が⎯⎯無理している気がしてならない⎯⎯。
「ほら、行こう」
青になり、横断歩道を渡り、人混みを縫う様に抜けて行き⎯⎯駅に着く。
「乗車券買って来るので、待っててください」
券売機に向かった蓮を待っていると⎯⎯。
「あ、あの!
Acid Dark Cherryの穏さん…ですよね?」
穏を見掛けた3人の女性達は、ファンの様で……首にネックレスを着けて居る女性、フープピアスを着けて居る女性、同じ髪型にして居る女性は、キャッ、キャッ、キャッと、はしゃぎながらも恥ずかしがる姿に、穏はコクッと頷くと、またキャッ、キャッ、キャッ♪とはしゃぎ、恥ずかしがりながら握手を求めて手を差し出す。
「あ、あの…あ、握手…してくれませんか?」
フープピアスの女性が言うと、2人もせがむ様に手を差し出す。
「あ、ずる~い!
私も私も!」
「抜け駆けしないでよ!」
「喧嘩しやんと……握手するから、順番に、な?」
穏の一声で、女性達は静かになり、言われた通り、順番に握手する。
「きゃあ~!
ありがとうございます」
「ありがとうございます!
嬉しいです!」
「ありがとうございます!
もう、手、洗いません!」
「いやいや、ちゃんと手ぇは洗って」
握手で喜んでくれるファンが居る……。
穏は、ファンを通じて、改めて音楽をしていて良かった……そう、実感した。
「「「ありがとうございました!」」」
そう言って3人の女性達は帰って行くと、蓮が乗車券を持って戻って来る。
「お待たせしました」
乗車券の1枚を穏に渡して、2人は自動改札を通り、ちょうどプラットホームに来た電車に乗る。
中は比較的空いていて、2人は長椅子の端に座る。
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