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総務部の人間に抱えられていた経緯を考えるに、何やらとんでもなく面倒なモノを押し付けられてしまったのではないだろうか。傍の同僚に対して横目で「どうするよ」、と語りかける。とりあえずは総務部……迷子センターの人間を呼ぶべきではなかろうか。
扱いに困っている同僚に深いため息をつき、「どうしたんだよ」と橘がぼたんを落ち着かせるべく重い腰を上げる。
その声に反応してぼたんは振り向くと、デスク前の橘に近づいた。
いや、近づいた対象は、PCに映し出される画面だ。橘と同僚の間をひょいひょいっと抜け、橘の隣からピョンと顔をだし、背伸びして画面をみる。
何故、こんな幼い子どもがと思っただろう。
興味本位や好奇心からきた行動ではない。
ぼたんは“ある文字”をみて、それを確認するためにジッと画面を見つめているのだ。
その文字とは、普通の子どもなら絶対に関わることのない、名前。
「ぼたん、このひと、しってるよ」
指差す先にある文字は――――“moguLa”
「しせつに、いっぱいふくやおもちゃをくれひとたちのなまえにかいてあったよ、これとおなじの」
ぼたんはその文字の読み方は知らなかったが、名前の形は頭に残っていたらしい。
ギャンググループが、何故そんな慈善行為をしたのか謎だが。
ぼたんはただ、自分が知る事実をスラスラ喋る。
「たべものはいつもくれないんだ。でもたまにおかしをくれる。ぼたんは、いつものこってなくてたべれないんだけど。でも……みんな、そのおかしたべるとよるどっかにいっちゃうんだ。でもあさにはちゃんとふとんにねてる」
ぼたんは自分が見たことを思い出して語る。
その発言が、重要なことを言っているなんて、ちっとも思っていない。
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