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case0:邂逅
大型ショッピングセンターの中は、いろんな人で賑わっていた。
友人、カップル、家族、一人で買い物する大人……と本当に様々だが、その中に似つかわない存在が一人いた。
幼い男の子である。
まだ6~7歳、幼稚園年長か小学一年生くらいの小さな子。
その男の子は一人で、ふらふらと人込みに紛れながら店内をうろついていた。
その幼子の服装は、黄色ロゴTシャツのインナーに、ボトムはくたびれた感じの色落ちした、藍色デニムの短パン。
Tシャツの上には薄いオレンジパーカーを羽織り、靴はボロボロの元は白であったと思われる薄汚れた黒スニーカーだった。オレンジに近い短い茶髪はふわふわとしていたが、ボサボサともいえて、それも汚そうにみえる。
なんと表現したらいいかわからないが、男の子を見た者は口を揃えて同じことを言う。
“親は何をしているのか”と。
こんな時間に一人でうろついてるのも変だし、また服装を見ても、ちゃんと育てられてないんじゃないかと疑うレベルだ。
いわゆる“虐待”なのではないか……そんなレベルである。
だが、はっきり言えば男の子は虐待なんか受けてない。
そもそも、親がいないのだ。
男の子の両親は彼が4歳の時に“ある事件”で死んでしまっていた。
だから、彼は今『施設』に預けられている。
ただ、その施設が貧乏な施設なので服装も、こんな薄汚れたボロボロな感じのものなのである。
話が逸れたが、今の問題は男の子が何故ここにいるかだ。
彼は周りををちらちらと確認し、人気がなさそうな通路の端にある非常階段の方へ向かっていた。
「――わっ!?」
その途中、ドンっとちょうど買い物をしていた女性にぶつかる。
尻餅をついたが、すぐ立ち上がり女性を無視して隠れるように男の子は目的地まで進む。
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