case2:立てこもり事件

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 橘は眉根を寄せる。狙いはこれか、と。牡丹1人を見せしめにして、抵抗しないように意識のコントロールをする。狂っているのに冴えていやがると舌打ちし、そっと美奈に視線を向ける。  それを受けた美奈は首を横に振る。警察が中に入るにはまだまだ時間がかかりそうということ。  橘はどうにかして、牡丹を助けてやりたいが敵の情報が少なすぎた。人数の把握ができない以上下手に動いて人質を危険に晒せない。 「ほら、あと何発耐えれるかな?」 「っあ!……っろ、6!6回、たえ、たら……っ」  殴られ続ける牡丹。橘はふと気づく。先程から何故あいつは6という数字に拘っているのだ、と。  4階までしかないのに6階といい、今も6回耐えたらなどという発言。  そもそも牡丹は本当に捕まったのか?あの時視線が絡んだ瞬間を思い出す。牡丹はーー小さく、笑っていた。 「そうか……そうだよな」 「え、橘くん?」  小さな呟きは隣の美奈にしか聞こえない。橘は体を張って情報を伝える小さな相棒をもう一度見て、美奈に指で数を示す。気づいた美奈も頷いて、背後の方にいるマスクの男の位置を確認した。 「はい、5ー!」  牡丹は殴られ続けながら、チャンスを待っていた。必ず気づいてくれると信じて。ここにいる人質全てを無事に救出するための、道筋を密かに作りながら。 「じゃあ、お望み通りのラストいこっか?6発目、耐えれるかな?」  リーダーが愉しそうに拳を振り上げる。  瞬間ーー「うわっ!」と野太い声が人質達の方から響いた。  マスクの犯人達が一斉に顔を向ける。  そして次には床に叩きつけられていた。  やられた本人は何が起こったかわからないだろう。橘が素早い動きで急所を攻めてノしていることなど。牡丹は痛みと痺れで上手く起き上がれない。しかし、視界には入る。そして笑うのだ。   「うわぁあっ!」
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