case2:立てこもり事件

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 人質に銃を向けていたマスクの1人に橘が攻め込み、それに気を取られる隙に美奈が背後のマスクの1人に近づき股間に一発蹴りを入れる。  残りの2人がそれに気を取られた一瞬で橘は目の前の敵を沈めた。  合計4人、人質を囲んでいたマスクの男達は無力化された。  相手に銃を撃つ暇すら与えない鮮やかな動き。圧倒されていたリーダーと牡丹を連れてきたマスクの男がハッとして動こうとする。  牡丹は、無抵抗をやめた。馬乗りになるリーダーの腹を蹴り上げ、そのまま抜け出し橘を狙うマスクの男の鳩尾に思い切り蹴りを入れた。倒れる男。残るは1人。 「動くな!」  リーダーの銃が牡丹に向けられる。橘は動こうとするのを必死に堪え、歯を食いしばった。  人質を背にしている以上、銃を構える奴には何もできない。  牡丹は痛みで頭がガンガンしながらもゆっくり振り向き、小さく息を整えた。 「なんだよ、さっきまでのは演技?よくやるねぇ。そんなボロボロになってまで、なに?きみ、あの怖い顔のお兄さんの仲間?」 「だったら?」 「じゃあ、こうしたら……きみも最高の顔つきになるのかな?」  リーダーは銃を橘に向けた。 「っ!?やめろ!!」  牡丹は叫ぶ。しかし、リーダーは銃を下ろそうとしない。 「あはっ!いい顔するねぇ」 「やめろ!」 「やめない」  リーダーの引き金に指がかかるのを見て牡丹が走り出すも、間に合わない。そう悟った時ーー橘の背後から何かが飛んできた。  それはマスク男から奪った銃で、それを投げた人物は……美奈だった。  受け取った橘はその銃を構えてリーダーに向ける。互いに銃口を突きつけ合い膠着状態になった。 「へぇ、お兄さんには優秀な仲間がいるんだねぇ。羨ましいなぁ」 「うるせぇ。お前こそ、仲間がやられてんのに随分と余裕じゃねぇか。今この状況を打破できる策でもあんのか?」
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