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「あるよ」
リーダーは牡丹に銃を向けた。そう、橘が狙われたと思い走り出した牡丹はちょうどリーダーの近くにいたのだ。
「テメェ‥‥本当にいい性格してんなぁ」
橘の顔が歪む。後ろの方で美奈も不安そうに見ている。人質達も一度は解放されると喜んだが、静かに成り行きを見守る。リーダーは愉しそうに笑った。
「さっさと、そいつから離れろ」
「いやだね。お兄さん気づいてる?さっきからこの子に危害を加えると顔が最高に歪んでるの」
リーダーは狂ったように笑い、牡丹の額に銃をつきつけた。案の定橘の顔が歪むのを見て、更に嗤う。
「このガキ殺したら、次はお兄さんを殺すよ。そうしたら、みんなの希望は潰えるもんね」
その言葉を聞いた牡丹は、銃をつきつけられていることなど、お構いなしにリーダーの懐に潜り込み、下から顎に向けてアッパーをくりだした。
「あがっ!?」
思わず銃を落とし、顎を押さえるリーダー。牡丹の攻めは止まらない。脳が震えてふらつく相手を押し倒し、馬乗りになる。
そして、首を狙って拳を叩きつけた。
「うぐぁっ!やめろ!!」
「やめる?なんで?だって祥くんを殺そうとするんでしょ?だったら、消さなきゃ」
その顔は能面。リーダーは背筋がゾクリとした。そして、また一発拳を入れる。悲鳴をあげるリーダーに容赦なく牡丹は殴り続ける。
小さな子どもが一心不乱に大人のそれも急所を的確に殴り続けるという異常な光景に、人質達は息を呑む。
「ひっ!やめっ!」
「やめて?違うでしょ?祥くんに謝ってよ」
「ごめん、なざい!わるかっだ、から……もう殴らないでください……お願いします…….!!」
リーダーの悲痛な懇願に牡丹は振り上げていた拳を止める。そしてそのままリーダーが落とした銃を拾った。
「……うん、わかった。じゃあね」
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