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「……はぁ……まぁいい。で?なんでその大量のケーキをわざわざ俺の家で食う必要があんだよ。本部の食堂でもよかったろ」
橘が2人に圧倒されつつも半ば諦めて尋ねる。すると、顔を見合わせた牡丹と美奈はニヤニヤとしながら橘に言った。
「だって、祥くん誕生日でしょ」
「……あ?」
「ふふん、総務部をなめないでね?個人情報は把握済みでぇーす」
牡丹と美奈の言葉で橘は初めて自分が誕生日だったことに気づく。忙しい仕事柄、そんなものは気にしたこともないし実際忘れていた。それでも、目の前の2人はただの過ぎ去る日ではなく“大切な日”として祝ってくれる。
「んだよ、それ……。別に祝うような日でもねぇだろ」
「そんなことないよ、オレらがお祝いしたかったんだよ!あと、ケーキ食べて祥くんの機嫌も良くしたいし」
「誰が不機嫌だ」
「ほらほら、仲良しさんたち戯れ合わないの。さ、どれにする橘くん。主役だもの、一番に決めて」
「……ったく。しゃーねーなぁ……」
口ではそう言うが橘の表情は柔らかい。2人の気持ちは十分伝わっているのだ。
「誕生日おめでとう祥くん」
「おめでとう橘くん」
「ああ、あんがとよ」
少しぶっきらぼうなのは照れ臭いからか。それがわかるから牡丹も美奈もニコニコ笑う。
「祥くん、ハッピーバースデー歌う?」
「いらねぇ」
「照れちゃって」
「ちげぇわ」
そんなやりとりをしつつ3人はケーキをつまむ。橘は少し驚いていた。ずっと1人で過ごしていた日々が、こうして1人ずつ増え、賑やかになることを。
それを案外悪くないと思っている自分自身に。
「美奈さん!このチーズケーキおいしいよ」
「こっちのティラミスも最高。食べてみて」
美奈に言われて幸せそうにケーキにかじりつく牡丹。それを見て、橘は考える。
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