4人が本棚に入れています
本棚に追加
橘の後ろで任されたぼたんを抱きながら、様子を窺う同僚。眠っていたぼたんは服を掴んでいたのに、不意にその感触が消えたことに反応しーー
「――や、やだっっ!!」
バッと飛び起き、何かを掴もうと手を伸ばす。
しかし、その手は何も掴めず、視界にはパーマの男の後ろ姿。
急に起きたぼたんに同僚も驚き、思わず下におろして立たせた。床におりたぼたんは辺りを見回す。
ここまで連れて来てくれた美奈がいないことに気づき、酷く困惑した様子が見てとれた。
だが、それも一瞬で……すぐにぼたんは室内をチョロチョロと歩きまわる。
そして机下のゴミ箱に目をつけ、その中身の紙類を手にとり――
「あむ……」
無断で口に入れ食べてしまった。
情報を洗っている橘はPCの画面へと目線を移す。
最近の事件に小さくではあるが関わり、共謀しているであろう名も聞いた事のないようなギャンググループ「moguLa」。
――新興組織なのかどうなのかは知らないが、このギャンググループの名は一般はおろか裏社会にも知れ渡っていない。
「ふざけやがって。……どいつもこいつも」
量の多い前髪を垂らし、力無くデスクの角を叩く。情報を洗い現実を目の当たりにした今、判った事は不可解な事件の裏には必ず救えない弱者がいる。
法で守られるべき存在が法の隙間をぬって悪に喰い物にされる現実に舌打ちする。
もう、我慢の限界だ――彼個人の怒りが沸々と沸き上がる中、背後から聞こえた慌てた声。その声の主が大いに動揺する中、振り向けば……額に浮かぶ冷や汗に、只事ではない表情をして、奇怪な行動をするぼたん。
「おい、おい。マジでか?」
唖然とした顔で人間の、それも小さな少年がゴミを咀嚼する異様な光景を眺める橘。
最初のコメントを投稿しよう!