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床の間のお坊さん
これは、リカが小学校一年生の時に住んでいた家での出来事です。
リカの家には十畳の和室に仏間があり、仏間の隣には三畳の広い床の間がありました。
床の間には、金箔の彫刻がなされた水牛の角、色鮮やかな古九谷の布袋様の立像、夫婦に誂えた雉の剥製、断崖の上で口を開けて威嚇する豹の銅像など、所狭しにと骨董品が置いてありました。
リカは学校から帰るとすぐに、この十畳の和室で遊んでいました。家具が殆どない部屋だったので、近所の子供たちを誘って特撮ヒーローごっこやままごとをして、よく床の間にも足を踏み入れました。
お転婆な盛りです。リカは水牛の角の金箔を剥がしたり、布袋様の顔に落書きをしたり、雉の剥製を振り回したり。やりたい放題やっては祖父母に怒られるのですが、普段孫に優しい祖父母ですからリカは懲りることがありません。
そんなある日のことでした。
リカは普段、この床の間に頭を向けて昼寝をするのですが、その日は何故か寝付けませんでした。
と言うのも、その床の間の真ん中に、いつもは大きな花瓶……と言っても、今思えばそれは赤ん坊一人分の大きさをした練りガラスの花生けの壺でした……が黒塗りの御膳台の上に置いてあるのですが、どういうわけかその日はそこに花瓶は無く、代わりにお坊さん……正確にはお坊さんの首だけ……が目を閉じたまま置かれていました。
リカは横になったまま暫くそのお坊さんを見つめていましたが、さすがに逆さまに見るのは居心地が悪くなったのでむっくりと起きあがり、お坊さんと向き合うように胡座になりました。
するとお坊さんの目が半眼になり、リカを見つめながら話しかけるのです。
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