37.ドウダンツツジ

6/11
前へ
/242ページ
次へ
「あの――前もこういうこと――ないよね。何言ってんだろ、俺」  あったよ。初めて会った日も、同じくらいの時間に同じ服装で、湊君はお店に入ってきたよ。 「どなたかへのプレゼントですか?」  私は、あの日の会話を思い出して言った。 「いえ、自分の部屋用に――もっと植物――花じゃなくて葉の方――とかあったらいいかなって。帰り道、たまたまこのお店があるのに気づいて」  湊君も、あの日と同じような言葉を口にした。もっと、ということは、ドウダンツツジとアボカドはまだ育てているのだろうか。 「こちらはいかがですか?」  残っていたドウダンツヅジの枝をバケツから取って、差し出す。 「……」  手に取った湊君は、確かめるようにしげしげと眺める。どうか、どうか思い出して、湊君。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

363人が本棚に入れています
本棚に追加