37.ドウダンツツジ

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 夕方、六時を回った頃。  やっと落ち着いた店内で片づけをしていると、カラン、とベルが鳴り、作業の手を止めてドアの方を見上げた。すると、デニムにグレーのパーカーを羽織ったすらりとした――私は息を呑んだ。湊君だ。まるで最初に会った日のように、湊君がお店に入ってきた。 「いらっしゃいませ」  来てくれた――。 「こんにちは」  湊君はまっすぐ私を見て答え、そして、目を丸くした。 「陽向さん?」 「ご無沙汰しています」 「――どうして、ここに?」  湊君が困惑したような笑顔で言う。  湊君に会いたかったからだよ――そう言いそうになるのを、必死でこらえた。 「独立開業したの」 「ここで?」 「そう」 「驚いたな――すごい偶然。職場がすぐ近くで」  偶然じゃないよ、湊君。知っていてここにしたの。
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