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002:出会い
かなりの力が込められた威力の有る一振りに、さすがにこれは避けられないと少年は判断。とっさに背中を丸めて頭を守った。すると木の棒は肩を強かに打ち据える。
「ぐっ!」
その鋭い痛みに思わず呻いて膝をついてしまう。
その一瞬を見逃さない男達は、とうとう少年を押さえつけることに成功したのだった。
「手間ぁ掛けさせやがって!」
そうして始まる躾けという名の暴力。
そんな中でも少年は身体を縮め、身を守りながらも必死で隙を窺っていた。
そしてその瞬間が訪れる。
男が改めて少年を引き立たせるために暴力が止んだ瞬間。少年は前方に猛ダッシュした。
すると目の前に少女が立ちはだかった。
いや。正確には、たまたま通りがかっただけなのだが、ちょうどダッシュをした少年とぶつかったのだ。
少年は弾き飛ばされ、後方へ尻餅をつく。少女はわずかによろめいただけ。そこへ男たちが少年を捕まえるために群がった。
「はっは。捕まえたぜ。運がねぇな」
今度こそ男達に完全に取り押さえられる少年。それでも抵抗を諦めずに必死で足掻いていると、そんな少年に「しぶてぇガキだな!」と言って男たちが再度、暴力をふるおうとした。そこに先程の少女が割って入って止めた。
「いい加減にしたら? 商品なんでしょ?」
少女の言葉に男達が「ああん?」と怪訝そうな顔をする。
少し脅してやろうかと思って少女を見るも、すぐに考えを改めた。
その出で立ちからして、かなり名のある冒険者だと分かったからだ。
金の髪に翡翠色の瞳。肌は真っ白で耳が少し尖っている。その背には弓。腰には短いながらも双剣。
装備も意匠の凝ったミスリル製のレザーアーマー。小手もすね当ても同様でほぼほぼ全身がミスリル製。
グローブもブーツも一目で高品質だと分かる魔物の革製のもので、しかも使い込まれている。素人が格好だけを揃えたものじゃないことはすぐに分かった。
「アンタみたいなのには関係のない話だ」
渋々と口を開いたのは真ん中い居た禿頭の男。
「だとしてもよ。目の前でそういうのを見せられるのは不愉快なの」
男達は少女と目線すら合わそうとしない。少し接しただけで、その力量差が分かったからだ。少女自身が威圧しているからでもあるが。
「ちっ。行くぞ!」
少年を引き立たせて歩き出す男達。少年はその間も隙あらばとチャンスを窺っていたが、とうとう逃げ出すことは叶わなかったようだ。
今度こそ少年は奴隷商の館へと連れて行かれたのだった。
少女はそんな少年の後ろ姿を見てクスッと笑う。
「ふふ。諦めの悪い人間の男の子、か……うん。悪くない」
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