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2.
──新都市暦二一八年
『……あの怖いもの知らずのお嬢さんも、もうすぐ十八か。時が経つのは早いものだね』
革のソファに座ったユーロゥがそう伝えて視線を窓辺に向ける。ドーム状の外壁に囲まれた新都市のビル群を眺めていた少女は、いたずらっぽい表情で彼を振り返った。
『感謝してくださいまし。今やユネイル社の知名度は私のおかげで爆上がり街道まっしぐらなのですから』
『いや、君を起用する前から僕の会社はそれなりに有名だったのだけど』
少女はくすくすと肩を震わせる。緩く編んだ金色の髪が揺れるのを見てユーロゥは軽く目を閉じた。
『今日の取材は君の公演会の宣伝も兼ねているんだ。くれぐれも悪印象は残さないでくれよ』
少女が言い返す前に来室を告げる細いベルが鳴る。ユーロゥが音を立てずにソファを立つと、その脇に控えるように少女が並んだ。
応接室を訪れたのは若い女性だった。
蜂蜜色の髪は肩上で角度をつけて切りそろえられている。きびきびとした動きながら、ローヒールの靴音を磨かれた床に響かせることはない。
『ルヴィ・フォーカス社のリラ・マーズです。ユネイル社の社長ユーロゥ・ユネイルと歌姫フラナデール・リティ。今をときめくお二方とお話ができるなんて光栄に思います』
そう伝える割に、静かな作り笑いはフランを一瞥もしない。おそらく彼女は反有声人種寄りだな、とユーロゥは笑顔の下で分析する。
挨拶を済ませソファに座った三人は細い金冠を装着した。手元の板状端末を立ち上げると、リラは淡々とした心帯声音で伝える。
『ミスタ・ユネイルは二十歳という若さでユネイル社を設立され、今では新都市でも屈指の事業家として注目されていますね』
リラの心帯声音を金冠が読み取り、端末上に一言一句違わぬ文字を連ねてゆく。ここにまとめられた文字情報が編集されて電子新聞になり、さらに人工音声を加えたものが情報番組として配信される。
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