プロローグ

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ

プロローグ

東国の鎧で豊麗な胸部を包んだ美女は言った。 「立たぬかッ!そんな子に生んだ覚えはないわ!…腕が斬り落とされたり、脚の骨を叩き折られたのでは、なかろうに!……これをみよ。木太刀(きだち)を用いておるのだぞ。これが真の槍であったのならば、とうにそなたは私に突き殺されているであろう。………立てぇい、気弱な娘!…私にはそなたを叩き出す覚悟があり、用意はできておるのじゃ。……わかったか、ファニー?」 「う、ぅぅ……は、はいぃぃっ……は、はは、うえぇ…うう、うう、ぅぐっ、ううっ…」 小さな鎧を装着した女の子はしゃくりあげつつ、立ち上がって木刀を握った。 「………よろしい。良い子ね……きなさい」 美女は距離を取って、構えた。 「…………う、う、ぅわぁ、あああ、ああぁぁぁーーーーッ!!!!」 女の子は涙を飛び散らせながら、実の母へ突進していった。 鋼の瞳をした美女は実の娘へ木刀を本気で振るった。 「………ぁ…ぁぁ、あああ………はぁあ〜〜〜……はっ…は……はぁ…」 見守っていた父は、気疲れで床にへたり込んでしまった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!