四つの結晶(4)

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四つの結晶(4)

先生「……。風のあかし。……空を吹き抜ける風はすべてのものへ影響を与えています。火も地も水も、その影響下にあります。逆をいえば、風を制するものは全てを制することができましょう」 「周囲の全てへ影響を及ぼすものは自らを律(りっ)しなければなりません。……自らを殺すのではなく、自らを抑え、自らを知るのです。これは自らの行いがどのような結果を招くのかを先読みし、全てを受け入れる覚悟を持つ、ということです」 「蒼天(そうてん)にある雲を動かす風は強く、小さな花をゆらす風は弱い。……しかし、この違いはどこから来るのでしょうか。暴風ばかりが吹き荒れると、何であっても存在することはできません。ただ、無風が続くならば風車は回らず、帆船も進みません」 「……果てしない空を優雅に渡るさまざまな鳥に学んでください。また、野山を飛ぶたくさんの蝶からも答えを得れることでしょう。あなたならば、自らが起こす風を上手に調節できるはず。……わたしは、それができませんでした。いつも、いつも、自らが作り出した逆風で立ち往生していたものです」 「……その点、あなたは大丈夫。わたしの何倍も自分というものをわかっているから。どんなときも、良い風を吹かせてください。あなたが一緒だと、追い風へ恵まれたみたいにみんな、いきいきと進んでゆけるのですからね」 「「「…!!!!」」」 座っている三人は先生の劇変に驚愕(きょうがく)した。 先生「…隊の長への就任、本当におめでとう。わたしも嬉しいわ」 「……師、師よ…わ私は…何も、あ、ああなた様の…ご教授、ゆえにぃ…ッ…」 シュテファニーは目に涙を浮かべ、言葉に詰まってしまった。 先生「いいえ、あなたの努力が実ったからです。わたしはきっかけを与えただけ。…そんな顔しないの。…さぁ、お座りなさい」 「は…はいいッ…うッ…」 シュテファニーは涙をぬぐいながら席まで戻った。 先生「…続きまして、火。…ローズマリー、前へ」 「……はいッ」 隣のシュテファニーを見ていたローズマリーは立ち上がった。 「…ローズマリーには、これを」 箱の中から火の結晶を取り出した先生は両手でそれをローズマリーへ渡した。 「はい…」 両手で受け取ったローズマリーは結晶を見つめた。
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