14人が本棚に入れています
本棚に追加
四つの結晶(4)
先生「……。風のあかし。……空を吹き抜ける風はすべてのものへ影響を与えています。火も地も水も、その影響下にあります。逆をいえば、風を制するものは全てを制することができましょう」
「周囲の全てへ影響を及ぼすものは自らを律(りっ)しなければなりません。……自らを殺すのではなく、自らを抑え、自らを知るのです。これは自らの行いがどのような結果を招くのかを先読みし、全てを受け入れる覚悟を持つ、ということです」
「蒼天(そうてん)にある雲を動かす風は強く、小さな花をゆらす風は弱い。……しかし、この違いはどこから来るのでしょうか。暴風ばかりが吹き荒れると、何であっても存在することはできません。ただ、無風が続くならば風車は回らず、帆船も進みません」
「……果てしない空を優雅に渡るさまざまな鳥に学んでください。また、野山を飛ぶたくさんの蝶からも答えを得れることでしょう。あなたならば、自らが起こす風を上手に調節できるはず。……わたしは、それができませんでした。いつも、いつも、自らが作り出した逆風で立ち往生していたものです」
「……その点、あなたは大丈夫。わたしの何倍も自分というものをわかっているから。どんなときも、良い風を吹かせてください。あなたが一緒だと、追い風へ恵まれたみたいにみんな、いきいきと進んでゆけるのですからね」
「「「…!!!!」」」
座っている三人は先生の劇変に驚愕(きょうがく)した。
先生「…隊の長への就任、本当におめでとう。わたしも嬉しいわ」
「……師、師よ…わ私は…何も、あ、ああなた様の…ご教授、ゆえにぃ…ッ…」
シュテファニーは目に涙を浮かべ、言葉に詰まってしまった。
先生「いいえ、あなたの努力が実ったからです。わたしはきっかけを与えただけ。…そんな顔しないの。…さぁ、お座りなさい」
「は…はいいッ…うッ…」
シュテファニーは涙をぬぐいながら席まで戻った。
先生「…続きまして、火。…ローズマリー、前へ」
「……はいッ」
隣のシュテファニーを見ていたローズマリーは立ち上がった。
「…ローズマリーには、これを」
箱の中から火の結晶を取り出した先生は両手でそれをローズマリーへ渡した。
「はい…」
両手で受け取ったローズマリーは結晶を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!