四つの結晶(6)

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四つの結晶(6)

先生「……。地のあかし。……我々の立っている大地は、とても硬いものです。しかし実は、ただ単に硬いだけではありません。……地面から植物が小さな芽を出します。また、土の中へと穴を掘って暮らす生き物たちもたくさんいます。このように堅牢(けんろう)さと共に柔軟さも持ち合わせているのが、我々のよって立つ大地というものでしょう。硬くて削れない岩も、さらさらの砂も、大地の一部なのです」 「……大地は生み出します。また一方で、大地は受け入れます。地上で生きるものたちの母親そのものが大地です。亡くなった者を地中に埋めると、土へと還ります。土へ還るということと、大地の一部になるということは全く同じことです。……道端に転がっている小石も誰かの何かの一部分が、記憶が含まれているかも、しれないのですから」 「……いつだってそうですが、我々は始まりと終わりを一方的に決めています。けれど、大地にしてみれば、始まりも終わりもないのです。大地の前ではその上へ存在が許されたものは、いかなるものであろうともちっぽけな子供にすぎません。……そうです、揺りかごから墓場までの面倒をみてくれる大地へ畏敬の念を抱かずにはいられません」 「あなたは、あなたを基礎として何かを作り出せる素質を生来、持っていますよ。あなたは何も難しく考える必要などないのです。あなたが思う通りに行動するならば、それは土台となって立派な宮殿を作り上げるでしょう。その資質に誇りと自信を加えてください。……わたしが成し遂げられなかったことも、あなたなら簡単にできるはず。あなたがあなたでいる限り、周囲は周囲でいられます。あなたのお陰でみんなが日々を過ごしているのですから」 「先生ぇ…」 アンゲリカは涙ぐんだ。 先生「任務から戻ったら、訓練を再開しましょう。あなたはわたしより、はるかに筋がいい。きっと、他の剣技も使いこなせるでしょう。…信じることから始めてみなさい」 「は、い…ありが、とうッ…ござ、いますぅ…」 泣きながらアンゲリカは席へ戻った。 先生「…最後は、水。エーファ、来て」 「はい」 すっくとエーファは立った。 「…エーファには、これを」 箱の中から水の結晶を取り出した先生は両手でそれをエーファへ渡した。 「……」 両手で受け取ったエーファは結晶を見つめた。
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