四つの結晶(8)

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四つの結晶(8)

「……どうだった?先生っぽかったかなぁ?」 座った四人を前に先生は木製の箱を閉じた。 「…ッ、はぅ、ハッ…はぃッ…」 シュテファニーは目をふいている。 「ウッ…あッ…ウゥ…」 ローズマリーは泣いている。 「…ッ…ッ………ぅぅ…」 アンゲリカはうんうん、とうなずいている。 「…他の誰よりも、先生らしかったですよ」 エーファが一人で答えた。 「そう?…うふふふ……あなた達へ渡した結晶は、四つで一組になっているの。…何かが増えることも、何かが減ることもない」 先生は小さな箱を教卓の上に置いた。 「「「「…………………」」」」 四人はそれぞれに手の中の結晶を見つめた。 先生「……すべてのものはそのままで最高の価値をもっている……ものといっても、手で触れて形のあるものだけじゃなくて、目にみえないもの…例えば人の心もそうなんだよ」 四人の様子を見て、先生は続けた。 「……あなた達は、あなた達のままでいいんだよ。足すべきところも引くべきところもない。そのままで最高に良い。何も変わらなくてもいいからね。…胸を張って、任務へ臨みなさい」 「「「「…はいッ!!」」」」 四人の返事はぴったりと揃っていた。 先生「……このくらいにしとこうかなぁ…。わたしも、教官長のこと言えないよね〜。…シュッツバールさんは昔から、そうなんだよなぁ〜。……ふふふ、長々とごめんごめん」 アンゲリカ「…いえ、とても嬉しかったです」 ローズマリー「あんがと、せんせ〜」 シュテファニー「師よ…信敬(しんけい)致しております…」 「…あれ?三人とも、泣き止んでいますね」 エーファは横を向いた。 先生「…うん。…それを渡してからさ、わたし…一曲歌おうと思ってたんだ。けど、もう…いいね。歌はやめようか」 シュテファニー「!!」 アンゲリカ「先生、ここで歌われたりしたら、もう卒業式ですよ…」 ローズマリー「どれだけ…えっと……何て、言うの?」 エーファ「才色兼備とか、文武両道とか…」 ローズマリー「それそれ。せんせ〜、どれだけ、それ、なんですか?」 アンゲリカ「???…なに言ってるの、あんた?」 四人は笑い、先生も笑った。 「うふふふふふふ…。では、これで解散。あとは出発するための準備に入って。…本日はみんな、ごくろうさまでした〜〜」 先生が頭を下げると、四人も椅子から立ち上がり頭を下げた。
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