妻になった女騎士(6)

1/1
前へ
/150ページ
次へ

妻になった女騎士(6)

ローズマリー「ぅ、うん……すごいよぉ…ッ…エーファは…ッ…」 エーファ「…そうかな?わたしは二人の方が、わたしには欠けている部分がたくさんあるから……そこが魅力なのだと思う。……いろんな人間がいるからこそ、人間ってそれぞれに価値があるのだと、わたしには感じる」 「…どうして、何故、エーファのような才女が戦場へ立たなければならないのかしらね……」 独り言にも聞こえるシュテファニーの発言にエーファは冷徹な目で返した。 「……。わたしにも、わからないよ。…生まれた時代のせい、かな?」 「えッ…エーファッ!!」 ローズマリーは突然立ち上がり、エーファを抱きしめた。 「?…どうしたの?…賊が来た?」 きょとんとするエーファへ感情的になっているローズマリーが言った。 「あたしッ…エーファのこと…だいすきだからねッ……エーファと…で、出会えて…よかったあッ…もしも…ファニーと、あたしのッ…ふたりきりだったら、ことあるごとにあたしら、喧嘩してさ…ッ…いつか…あたしッ…ファニーに…斬り捨てられてたよッ…ッ…あんがとッ…エーファ、そばにいてくれて…ッ……」 「な、何をいうの!大切で大好きで愛する仲間を斬り捨てたりなど、しないわ!」 シュテファニーも同じく感情的になっている。 「…自分だけが正しいと、意固地になるところがファニーにはあるからね。…ない、とは言い切れないのではなくて?」 二人とは異なり冷静なエーファが述べた。 シュテファニー「う…あ……そう、かも……しれないのぅ……」 エーファ「…ふふっ…隊の長がファニーと決定されたとき、教官たちもよくよく考えて…わたしらを選んだのだろうけど。……先生も助言してくれたのかな?」 シュテファニー「………。そうじゃろうね……。……ああ……師に、お会いしたいものじゃ」 ローズマリー「……うん。先生と一緒に…みんなでさわいでたの、楽しかったよね。…また、剣の稽古(けいこ)もつけてもらいたいな。あと、先生といるとさ…あっという間に日が暮れちゃう」 エーファ「それは、わかる。充実して楽しいときはすぐに過ぎてしまうもの。…どうしてか、先生だけは誰であっても、先生って呼んでいたね。団長も他の教官たちも先生と呼んでた。…だから、わたしらもそのまま、先生と呼ばせてもらっていた」 ローズマリー「……先生って明るくって、気さくで、楽しくてさ…。教えんのも抜群にうまかったし…。こう言っちゃ変だけどさ……先生って、近所に住んでる年上のおねえちゃんみたいな気がしない?…ほんとうに憧れのひとだよ、先生は……」 エーファ「…うん。子供の頃、先生が近所に暮らしていたら……楽しかったろうな……救われただろうな…」 シュテファニー「……。私は、戦を繰り返せば繰り返すほどに……師へお聞きしたいことが増えていくのじゃ」 ローズマリー「聞きたいこと?」 エーファ「…先生なら、どうしたか?…と、いうこと?」 シュテファニー「ええ。……師へこれで良いのでしょうか、私は?…と、お問いしたいことが山のようにあって……」 「「…………」」ローズマリーはまだエーファを抱っこしている。 シュテファニー「………。私は、自分でもどうすると良いのかわからなくなるときがあるの。私は悪魔を討ち滅ぼし、この国を守るため、ユーリと共に進んでいる。…私はユーリの妻なのだし。……あなたたちのこともそうよ。主殿へ預けたままで……。あなたたちの指摘に対して、私は何も言い返すことなどできぬのだ。でも、いつだって私へと従ってくれているであろう?…すまぬ……ごめんね、二人とも……ほんに大好きじゃよ」 頭を下げるシュテファニーにローズマリーが明るい声をかけた。 「あたしもファニーのこと、大好きだって。……気にすることないってば。あたしなんてさ…小さいころから、何が何なのかわかんないままで過ごしてきてるんだし」 ローズマリーに抱っこされたままのエーファが続けた。 「……悩みや憂いは人生に付き物だし、誰もがみんな…知らず知らずのうちに同じ道を歩いているのよ」 「………」シュテファニーは暗い顔のまま、返答しなかった。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加