13人が本棚に入れています
本棚に追加
妻になった女騎士(8)
「………。…あれ?」
シュテファニーにぎゅっとされたエーファが声を上げた。
「?」シュテファニーは顔を下げた。
エーファ「……ファニー、いい匂い、する」
「そ、そうにゃの…?」シュテファニーは自らの腕の匂いを確かめた。
エーファ「……いい匂い。…ローズも、嗅いでごらん」
「ほんとう??……あっ…いい。いい匂いしてる……」
ローズマリーは椅子から立つや、シュテファニーの匂いを嗅ぎにきた。
シュテファニー「そ、そうなの……。自分では、わからにゃいのじゃけど……」
ローズマリー「…ねぇ、何の匂い?香水でもないし、石鹸でもないよね……何これ?…いい香りなんだけども……」
エーファとローズマリーはシュテファニーをクンクンしている。
「あ…ふ、二人とも…やや、やめ…は、はずかしめないでぇ……」
シュテファニーは赤面した。
「あたしら同じもの食べてるのに…これは、何?…ファニーの身体の匂いってこと……?」
ローズマリーは不思議そうである。
エーファ「…うん。野宿しているときであっても…ファニーはいい匂いしていたよ」
「…へ、そうであったの……」
顔を赤くしたままシュテファニーは座った。
「どれだけ恵まれてるのさッ。これだもん、ユリしゃんも幸せだよね〜」
ローズマリーも椅子へ座った。
エーファ「良かったね、ファニー」
「う…うん……ありがとうね………」
シュテファニーは照れている。
ローズマリー「いま言ってたけど、いつも愛しあっているんだからさ〜。今日だって、買い物に付いて行けばよかったでしょ」
シュテファニー「で…でも…そんなに治安が乱れている町ではないじゃろ?み、店はここからも近いし。教会の者たちもこの辺にはまず、訪れないだろうし。……ユーリだって、私と離れて…一人になりたいときもあるかもしれんし…」
「!!!」ぼそぼそ話すシュテファニーにローズマリーが驚いた。
「……これは…思わぬ発言だね」
ローズマリーに代わり、エーファが返した。
シュテファニー「何がじゃ?」
ローズマリー「いやね…ファニーの性格なら…警護のためじゃとか、それらしいこと言って、ユリしゃんと一緒に行くものだと…」
シュテファニー「そ……そうしたいのは、やまやまなんじゃけれども……」
エーファ「……けっこう考えているということかしら?……ファニーは教会が各地へ通達したために、国内では有名人になってしまっているものね。反徒(はんと)・ユリウスの右腕である剣技を使う美しき女騎士、ということで。ユリさんだけではなくて、シュテファニーの命を狙っている賞金稼ぎもけっこういるんだよ。…それとも、朝にユリさんと口論したとか?」
シュテファニー「いやいや、それはないぞよ。私は主殿と争ったりなどしない。主君に抗(あらが)う騎士がどこへいよう?」
エーファ「…騎士もいろいろだと思うけれど」
「あらあら…また、ですか…?」
ローズマリーは再び、にやにやし始めた。
シュテファニー「だ、だだ、だって…私……つ、妻…として…これといって、特段、な何も……できない、もの……」
エーファ「…家を守るというよりも…夫と共に戦う奥様だものね」
最初のコメントを投稿しよう!