妻になった女騎士(9)

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妻になった女騎士(9)

「その………主殿は…家事を行なって、家の外に出ない女性を僕は望んでいない。相手を縛り付けるのは愛情ではないって思うから。…今のままでいい。騎士のままでいい。これからも僕のそばにいてほしい、と……最初に言うてくれてのう……」 顔を真っ赤にしたシュテファニーが告白した。 エーファ「……よく、覚えているね」 「う、うれしゅうて…うれしゅうて……」 シュテファニーは頬を紅潮させ、続けた。 「……私はもう、騎士団へ戻りたいとは思っておらんの。ユーリと生きると…決めたのだから……。ユーリが地獄へ行くと言ったのならば、共に行こうと思う。……どのようなときも主殿のそばにいて、全てをわかち合いたいのじゃ」 「……」エーファはシュテファニーの表情を見ている。 「……武人だ、騎士だ、だと、私は虚勢を張ってきたが、ユーリと出会って……変わってしまった。自らでも驚くしかないほどに…私は、ただの女性(にょしょう)なのね。ユーリに優しくされるたびに、そう、凍った氷が溶けていくかのように…胸が温かくなって…もっと、もっと、この感覚に浸っていたい…と……」 シュテファニーの表情は自らの敗北を認めていた。 「……」ローズマリーもシュテファニーの表情を見ている。 「結ばれた後も、その前も、この胸の高まり自体は変わらない。…ユーリを喜ばせてあげたいの。ユーリを失いたくはないのじゃ。…ユーリに愛してほしい。無論、私もユーリを愛したい。私は主殿が望むこと、願うことは何であっても、かなえてあげたいと思うとる。…例え、それが世間一般の法や掟をねじ曲げるとなったにしても、かまわない。……これで、わかったでしょう。私はもう…王家や国だけに忠勤をつくしている騎士ではないの………」 シュテファニーの表情は艶(なま)めかしい。 「「……」」ローズマリーとエーファは黙っている。 「……私を軽蔑してくれても、いいわ。……。…師は、隻眼(せきがん)によって…全てをお見通しになっておられたのであろうか…」 完全に女の顔になったシュテファニーは独り言をつぶやいた。 ローズマリー「…別に軽蔑なんて、しないよ。…ねえ?」 エーファ「…うん。素直になれて…これで良かったように感じる」 シュテファニー「…………。…そ、そう言ってくれるん…?」 ローズマリー「ファニーもすっかり恋する女の子、いや女になっちゃって…。ちょっと腹が立つけど、これはこれで喜ばしいよ」 エーファ「…わたし、ファニーがわたしら以上に女の子らしい部分があるの…知っていたの。…懸命にそれを表面に出さないように努めていたのにも、気づいていたし」 「…………」シュテファニーは瞬きを繰り返している。 「戦いで命を落とすことなんて、ファニーはないよ。あたしらがファニーもユリしゃんも守るよ〜…大丈夫、大丈夫、ぜんぜん平気だよ〜」 ローズマリーはにっこり笑った。 「…………」シュテファニーは言葉を返せなかった。
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