重なる想い

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重なる想い

「……あ…どうしたの?」 ユリウスが問うと、エーファは答えた。 「…おかえりなさい。遅かったね。…ローズとわたしとファニーで…飲んでいたの。ユリさんが戻るまでの間、飲もうということで。そうしたら…二人共飲み過ぎて……酔いつぶれてしまって…。ファニーは自力で歩けたため、先に部屋まで連れて行ったよ」 エーファはテーブルでむにゃむにゃつぶやいている友人を見た。 そばに立っている宿屋の主人は困っている。 ユリウスは言った。 「僕がローズさんを部屋まで運んで行くよ。……エーファさんは、この荷物を……宿のご主人、すみませんです…」 頭を下げる若者へ宿屋の主人は首を横に振った。 「気にするなよ、お若いの。…部屋は三階の端っこだ」 宿屋の主人は札が付いている鍵をユリウスに手渡した。 鍵を握ったユリウスはつっぷしているローズマリーを抱き上げて、階段を上がり始めた。 エーファはユリウスの運んできた二つのバッグをそれぞれ肩にかけ、テーブルの上を片付け始めた。 宿屋の主人は椅子を元通りにしている。 古い木製階段を何段も登り、ユリウスは二階まで進んだ。 ふとユリウスが目を落としたところ、ローズマリーは胸をはだけており、下着が見えている。 酒のにおいがするローズマリーを抱き上げたユリウスは三階までたどり着き、ドアの前に立って鍵穴へ鍵を差し込み、カチャカチャンと音を鳴らした。 ドアを開けたユリウスは室内灯をつけて、並んでいるベッドに向かった。 「ローズさーん…お部屋に着きましたよー…って、聞いてないかぁ……」 独り言を述べたユリウスは手前のベッドへと、ローズマリーを寝かせることに成功した。 ばふっと、女がベッドへ載せられると彼女の膝までを覆っていたスカートがめくれ上がった。 ユリウスは、その部分を見つめてしまった。 明るさが安定した室内灯の下でローズマリーはすーすーと、眠っている。 酒のために上気しているものの、ローズマリーだって可愛らしい女性ではないか。 シュテファニーとエーファの美しさは無論認めるが、ローズマリーはローズマリーで美しい。 彼女には彼女の魅力や色っぽさがある。 無防備すぎる彼女の姿はユリウスを刺激し、なにかが彼の身体へ乗り移ったようであった。 獲物を見つけたようなユリウスの前でローズマリーは少しだけ身体をゆすり、つぶやいた。 「んん…ユリ…しゃん、早くぅ…かえ…て…きてぇ。……あたしも…さみし、から……」 …………! はっとしたユリウスはローズマリーの顔を見て、立ち上がった。 ……………………。 い、いい、いけない…。 いけない…ぼ、僕は、何を考えて…………。 何を、僕は…何を…しようとしているんだ……。 ……父上と…同じになっては……ならない……。 くるりとローズマリーへ背を向けて、ユリウスはドアから通路に出た。 ユリウスには聞こえなかったけれど、ローズマリーの寝言には続きがあった。 「…ユリしゃん…死なな…いで、ユリしゃ…。あ、たし…もぉ、ユリしゃんのこと…んん…。あた…し、ユリしゃん…しゅき…ん、んぅ……」 なんともいえない表情のユリウスが通路に出たところ、彼の正面にあるドアが開き、エーファが現れた。 「お荷物はこちらの部屋に運んでおいた。これが…この部屋の鍵。宿屋の主へ飲食代と部屋代は、まとめて支払ってあるから」 いつも礼儀正しいエーファから鍵を受け取ったユリウスは彼女へ頭を下げ、部屋へと入っていった。 入れ替わるようにエーファはユリウスが出てきた隣の部屋へ入った。 薄暗い通路にはドアの閉まる音が響いた。 部屋へ入ってきたユリウスは落ち着こうと深呼吸しながら、ベッドに腰かけた。 すると、隣のベッドで横になっていた女は布をめくり、彼へくっついてきた。 ユリウス「ん?…お、起きてたの?…うわ!?ま、丸出しぃ??…エーファさんの言っていた通り、かなり…酔って……」 シュテファニー「はぁ…ぁ…熱いから、すぐに脱いだのじゃぁ。ふぅふぅ…。ん、おおおっ、ユーリではないかぁ!!帰還なさったのじゃなぁ?…ユーリユーリ、私はこんなん好きにゃのに、会えんかったんじゃぞ〜。はぁ、はぁ…ふぅ…ユーリ〜。おぬしと二人きりとなったのならばぁ…武人のたぎりは抑えられぬ、わ〜〜」 ユリウス「……ぷ、あはははははは。そんなに会ってなかったっけ?言葉がおかしいよ…。あははははははは…酔うとおもしろいなぁ〜。ははははは…。今のは戦場で、正々堂々と争える強敵と出会ったときに言うものだよ?」 シュテファニー「あぁん?こ、言葉など…わから〜ん。矢も盾もたまらぬ〜。私は…おぬしが愛しゅうて…愛しゅうて…もうもうもうもうもう、しかたないのだぁ〜〜」 ユリウスはシュテファニーを抱きしめてあげた。 「…うん。僕も…それは、そう…なんだ…」 シュテファニー「は…あ、あぁ…ユーリんよ〜。待って、おったぁ……」 ユリウス「……チュッて、するよ…いい?」 シュテファニー「お〜〜頼も〜う……ん…ッ…ッ…んん…ん……」 ユリウス「んんんっ、んふっ……ハァ…。舌いれてきて…情熱的だ、な…」 「い…いうなぁ〜。ユ、ユーリよ…焦らさんでくれぇ〜。ユ、ユーリんと離れてまうと、さみしゅうてさみしゅうて、もうもうっどうしようもないの、私…。ふぅふぅ…お願いだからぁ…はぁ、ぁあ…」 ぎゅっとシュテファニーはユリウスへ抱きついてくる。 ユリウス「う…ぅ…ぅん……」 シュテファニー「ぅれしぃ…んんん…ユーリ〜……」 ユリウス「お!!と、突然…あ、あ…や…そんな、ふうに…おぉ……あああ…ああ、ファニー…って…ば…お、おわあぁぁ……」 酔いがまわっているシュテファニーにユリウスはかなわなかった。
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