女性たちと僕(1)

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女性たちと僕(1)

妹が…………ユリアはまだ生きている……。 そう、敵から伝えられたユリウスは思い返していた。 まだ屋敷にいるとき、彼がシュテファニーと出会ってすぐの頃の記憶である。 ユリウス「…ッ…ッ…ふ…ふぅ……」 シュテファニー「ふぅふぅ…なぁ…せ、接吻…よりも、先のことは…何?どうするとよいの…ふぅ、はぅ、ふぅ、ユーリ…おしえて…おくれ…」 「え……あ…あの……こ、これ以上は…これ以上のことは……。あなたが、僕のことを想っているように……本気、なんだ…僕だって。…ファニーのことを……」 うつむいたユリウスはポツリポツリと言った。 「…………」 黙るシュテファニーにユリウスは静かな声で話し出した。 「…初めて…女の人と……ここまで、親しくなったよ。僕をこんなに受け入れてくれたのはファニーだけ。……僕は下の兄から、何人かの女性をあてがわれた。……下の兄は…寄ってきた女をとっかえひっかえしてる。…でも……僕は恋愛というのが、上手く出来なくて……相手との関係が自然に解消されてしまうんだ。その相手だって……僕自身、好きだった人ってわけじゃなくて。……僕は…優秀すぎる二人の兄と、勝気でしっかり者の妹に挟まれて……いつも、心のどこかがひねくれていた。……そんな…自分が、イヤだった。けれど…ファニーは…僕のことをそのまま受け入れてくれる。僕を……嫌わない。ファニーは…お前はここが悪いんだ、ここを直せ、とは言わずに…僕の手を握ってくれる…。僕は…あなたと出会ってから…自分のことを好きになってきた。……。はぁ……あなたを苦しめたくはない。……大好きなファニーに重荷を背負わせたくはない。僕は……そう、思う…」 「ゆゆゆッ…ユーリぃ…ユーリ〜ッ!!」 突然とシュテファニーはユリウスへ抱きついた。 しっとりとした女に抱きつかれたユリウスは伏せ目で言った。 「あ…あなたを嫌っているんじゃ、拒んでいるじゃ、ない。…好きなのは、本当なんだ。誤解……しないで……」 シュテファニーが言った。 「…わかっておるぅ…。そんなにッ、そんなッに…私を、愛してッくれてぃるだ、なんてぇ……ッ…ッ…ッ……」 「……」ユリウスは困っている。 「……。わ、私ッ…だって…私ぃッ…だって、ぇ……」 シュテファニーは言葉をつまらせた。 「……ぇ!?」ユリウスが聞き返した。 シュテファニーはすべてを語りはじめた。 「が…外見はッ…取りつくろっては、いるがッ…中身ぃは…私の心もッ…屈折、しておるのだぁッ……。私は…私はッ…つ、剣(つるぎ)しか…ッ…ッ…頼れるものが、ないッ。誇れるものがッ…他に何も…ないッ…。ほ、ほんとうは…ほんとうは…鎧など、着たくはなかったぁの!!か、兜もッ、盾も…いらない!!…女のようにッ…周囲にいる…女たちと同じようにッ…生きたかったのッ!!けど…けどぉ……」 「……」 黙るユリウスへシュテファニーは続けた。 「…母上みたいな美しいドレスを、着てみたかったぁッ…。それなのに……。母上は…武具ばかり…私にッ与えて……。…私は…こんな己を、愛せなかったのじゃぁッ……。母上からの愛情をを、純粋にぃ…喜べない、己が…憎くて、憎くてぇ…だからぁッ…剣の稽古(けいこ)に、打ち込んできたのぉ……。そ、それだけで…わ、私は…自分は、強くなったと、思い込んで、いたの…」 「……」 何も言えないユリウスへシュテファニーはさらに続けた。 「だが……騎士団に、入ってぇ…。師…剣技を、授けていただいたぁ…恩師さまにッ出会って…。私は…悟ったッ。私の剣術など…どれほどのことも、なかったのだ…とッ。そこで…私の唯一の自信は、打ち砕かれてしまったぁ。ゆえに、剣技を、私はっ…。……そんな、そんな挫折してばかりの私を…ユーリは、好いてくれた、から、だからぁっ…」 「……」 これまで黙っていたユリウスは、彼女へ言うべき言葉が定まった。 シュテファニーは涙を飛び散らせ、彼へ告白した。 「ユーリ…好きじゃ!!私をお主の人生の伴侶(はんりょ)としてくれぇッ!!今すぐに、とは言わぬ。わ、私と…一緒になってくれぇ!!……ごめん、ごめんね…強引なのじゃ、私ぃ……ユーリ…こんな私を嫌いにならんで……」 ユリウスはシュテファニーを抱きしめた。 「謝らないでいい。…愛してるよ、ファニー。どうしようもないほど、好きだ」 「あっ…ユーリ…あ、あ…ぁぁ、ユーリ……。ユーリ〜〜〜」 シュテファニーの涙は止まらなかった。 ユリウスも彼女につられて涙が出てきた。 そうか…………泣いてもいいんだな……と、ユリウスは感じた。 ……………………。 朝日を見た後、ユリウスは眠っているシュテファニーの頭をそっとなでた。 …………ユリウスはそれとは別の記憶を思い返した。
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