屋敷への派遣

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屋敷への派遣

女騎士は長い絨毯(じゅうたん)の上をツカツカと歩んできて、ひざまずいた。 女騎士「…召致(しょうち)に応じました。任務の内容はいかがなものでありましょうか」 女騎士の前には初老の男性が座っており、その横には若い男が立っている。 若い男「起立せよ、シュテファニー・ハンフシュテングル。コンラート団長閣下から、直々に貴様への特命である」 「…ハッ」 シュテファニー・ハンフシュテングル、と呼ばれた女はすっくと立った。 コンラート団長「…シュテファニー・ハンフシュテングルよ。不断なる鍛錬により剣技を修めたお主に命じる。……クロブラーム領のファルケンハウゼン家から要請があった。国内の治安悪化を食い止めるために同家は白龍騎士団を用いているが、人員不足に陥ってしまったらしい。…彼らは何者からか、幾度(いくたび)も脅迫を受けているとも言っていた。…よって、我が騎士団へ同家が所有する屋敷の警備を頼みたい、とのことだ」 シュテファニー「!!」 団長「…お主には現場へと赴(おもむ)き、警備隊の長として、任務へ就いてもらいたい」 「そのような大役を私に……光栄であります」シュテファニーは硬直した。 団長「…頼まれてくれるか?」 シュテファニー「ハッ!」 団長「うむ。……首尾よく任務を終えられるのを期待している。…それでは、エミールよ」 うなずいた後にエミール、と呼ばれた若い男はシュテファニーの前まで進んできた。 シュテファニーは再び、ひざまずいた。 「その者たちを貴様の配下とせよ」 エミールに指し示された壁を背にし、ひざまずいている三名の者たちをシュテファニーは見た。 「…ぁ」三名を見たシュテファニーは何かに気付いた。 エミール「準備が整い次第、隷下(れいか)の三人を率いて、屋敷へ向けて出発しろ」 「ハッ」シュテファニーが答えた。 エミール「…昨今ではどこの組織でも人員が不足している。貴様のような若年(じゃくねん)者へこのような大任が下るのが、その最たる例だ。好例を得たことに感謝するがいい。しかし、だからといって我が騎士団の名を汚すような振る舞いは決して、許されん。…心しておけ」 シュテファニー「ハッ。了解いたしました。…全身全霊を賭して、任務を完遂(かんすい)いたします」 「…以上だ。下がるがよい」エミールはコンラート団長の横へ戻った。 シュテファニーが立ち上がると、彼女から離れてひざまずいていた三名の者たちも立ち上がった。 シュテファニーと三名の者たちは深々と頭を下げた。 エミールとコンラート団長は首を縦に振った。 シュテファニーは踵(きびす)を返して、部屋の出入り口へ歩いた。 三名の者たちも彼女へ続いた。
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