6人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の花びらが、ワサワサと音をたてるように散っていく。
なんて風の強い日なんだろう。
道路に落ちた花びらさえも、更に舞うように飛ばされていく。
私は、スカートの裾を抑えながら、それでもあなたを見ていた。
これで最後になるあなたの姿を、目に焼きつけるように。
ずっと、入学式で見かけたあの日からあなたのことを、目で追い続けていた。
あなたは見た目の印象通りに、明るくていつも友だちと楽しそうに笑っていた。
そんなあなたが、ある日、1人で公園のベンチに座り込んでいた。
私は、そんなあなたに声も掛けられず、影からずっと見ていた。
あなたは、自分の膝を拳で何度も何度も叩いていた。
悔しかったのか、悲しかったのか、怒っていたのか、私には分からなかったけれど。
その気持ちを分かりたいと思った。
出来るなら半分、分けて欲しいと思った。
でも、現実的にそんな事は不可能で。
ただ、あなたを見つめるしか出来なかった。
そして私は、余計にあなたから目が離せなくなった。
廊下で見掛けたり。
登下校時に見掛けたり。
そうそう!2年生なって、あなたと同じクラスになった時は、飛び上がるくらい嬉しかったな。
授業中も、あなたの事ばかり見ていた。
もしかしたら、誰かにはバレてるかも、と思うほどに。
3年になって、あなたとクラスが別れて、私がどれだけ落ち込んだかなんて、あなたは一欠片も知らないでしょう。
それでも、私はこの3年間あなただけを、ずっと見てきた。
それも、今日が最後。
噂で、あなたが遠くの大学に行くと聞いた。
私は、地元の大学に決まった。
進学先をあなたと一緒の所にしようかと、真剣に悩んだ事もあった。
でも、私はちゃんと私の道を進むから。
あなたも、ちゃんと自分の決めた道を進んで欲しい。
今日で、あなたとも本当にサヨウナラ。
あなたと出逢えて、私は幸せでした。
あなたのその笑顔を、胸の奥にしまい込んで、私も顔を上げて、空を見よう。
ああ、桜がキレイに散っている。
最初のコメントを投稿しよう!