サクラが散った日

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桜の花びらが、ワサワサと音をたてるように散っていく。 なんて風の強い日なんだろう。 道路に落ちた花びらさえも、更に舞うように飛ばされていく。 私は、スカートの裾を抑えながら、それでもあなたを見ていた。 これで最後になるあなたの姿を、目に焼きつけるように。 ずっと、入学式で見かけたあの日からあなたのことを、目で追い続けていた。 あなたは見た目の印象通りに、明るくていつも友だちと楽しそうに笑っていた。 そんなあなたが、ある日、1人で公園のベンチに座り込んでいた。 私は、そんなあなたに声も掛けられず、影からずっと見ていた。 あなたは、自分の膝を拳で何度も何度も叩いていた。 悔しかったのか、悲しかったのか、怒っていたのか、私には分からなかったけれど。 その気持ちを分かりたいと思った。 出来るなら半分、分けて欲しいと思った。 でも、現実的にそんな事は不可能で。 ただ、あなたを見つめるしか出来なかった。 そして私は、余計にあなたから目が離せなくなった。 廊下で見掛けたり。 登下校時に見掛けたり。 そうそう!2年生なって、あなたと同じクラスになった時は、飛び上がるくらい嬉しかったな。 授業中も、あなたの事ばかり見ていた。 もしかしたら、誰かにはバレてるかも、と思うほどに。 3年になって、あなたとクラスが別れて、私がどれだけ落ち込んだかなんて、あなたは一欠片も知らないでしょう。 それでも、私はこの3年間あなただけを、ずっと見てきた。 それも、今日が最後。 噂で、あなたが遠くの大学に行くと聞いた。 私は、地元の大学に決まった。 進学先をあなたと一緒の所にしようかと、真剣に悩んだ事もあった。 でも、私はちゃんと私の道を進むから。 あなたも、ちゃんと自分の決めた道を進んで欲しい。 今日で、あなたとも本当にサヨウナラ。 あなたと出逢えて、私は幸せでした。 あなたのその笑顔を、胸の奥にしまい込んで、私も顔を上げて、空を見よう。 ああ、桜がキレイに散っている。
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