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ナージが頭に手を乗せてくるから、ちゃんと撫でろと頭を手に擦りつける。ゴロゴロと甘えているあいだに気づけば貴賓室に到着していて、ナージはソファに腰掛けた。
ハーフアップにしている髪留めに手が触れて頭の後ろを覗いてみると、金で出来た細工物だった。柔らかい金をこんな風に加工する技術はベッツァーにはないから、あのときこれを見ていれば違和感に気づけたかもしれない。
そうだ、ここで疑問は解決しておいたほうがいいだろう。
「ねぇ。ナージはどうして僕を?」
「偶然だな。サンディの王太子は直系にこだわらないから、子は必要ない。人間側にも獣人への偏見はある。それを俺の代で払拭したかった。ちょうどいい年齢で、誰もが好きになれそうな美人な獣人。それがお前だった」
「街で会ったのも偶然?」
「あぁ。顔を見て驚いたぞ。人間と結婚は嫌だと言うくせに、抱いてと言ってくるし……本当にリュヌはおもしろい」
リュヌは外の人にほとんど会ったことがなかったから、人間に偏見を持っていた。あのとき、本人に向かって酷いことを言ってしまったと反省していたのだ。
「ご、ごめん……」
「いんや?実際大型の獣人より体格的に劣るやつが多いからな。俺は見下されないよう鍛えていただけだ。リュヌのお眼鏡に叶ってよかった。あ〜〜〜、本当にかわいかったな〜〜〜〜〜」
思い出してニヤニヤするナージはリュヌをからかっている。未来の夫に処女をあげたくないからと、当の本人に奪ってと言ってしまったことを。途中で怖気づいてしまったことも含めて。
顔に血が上る。恥ずかしくてポカポカと胸を殴りつけるけど、全然効いてない。
「ナージの馬鹿!いじわる!」
「あははっ。先に出会えてよかった。閨での可愛いさも知れたし……これから先、楽しみだな。猫獣人の発情期は春だったか?」
「それは女性の話。男は相手の発情に誘引されるんだ。この前だってナージに発情させられたし……人間も春ってことか?」
「……へぇ。リュヌ、いいことを教えてやろう。人間は――――いつでも発情できる。年中、な」
「はっ?……ぇええ〜〜〜!?!?」
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