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情けない……。最後の悪あがきだと意気込んできたのに。
「ご、ごめん」
「大丈夫だ。落ち着け」
「……ははっ、こんなのじゃ婚約者にも呆れられちゃうな」
ナージはリュヌの正面に身体を横たえ、その大きな身体で包み込むように抱きしめてきた。緊張で冷えていた身体に、熱が伝わる。
「大丈夫だ。見目だけじゃなくてこんなにも可愛い性格をしていたとはな。誰だって夢中になるだろう」
「どこが……。閨でさえ満足させられなかったら、僕はただの置き物だ。今までも、これからも」
「無鉄砲で予測がつかなくておもしろい。閨でこれだけ動けたら大したもんだ。最後まで一方的に完遂されたらどうしようかと思ったぞ」
リュヌは嫌だと誤魔化しつつ、不安だったのだ。人間の国で獣人の自分が受け入れられるか。もし受け入れられたとしても、見た目しか評価されたことのない自分が、このさき一生置き物として生きていくのか――
ナージの手がリュヌの背を撫で下ろす。尾の根元に辿り着くと、その境目をなぞるようにくすぐった。
「んなぁっ」
「怖がっていたのも……目が眩むくらい可愛いらしかった」
「……ほんと?」
慣れた男の余裕というものか。ナージがそう言うのならこれでよかったのかもしれない。嬉しくて心臓がトクトクと高鳴った。リュヌは目の前の男に好かれたいと本能的に思っている。
ナージの胸から顔を上げると、グレーの瞳と目が合う。まるで愛おしいものをそこに映しているみたいにフッと目を細めるものだから、顔に熱が上る。
近づいてくる顔を感じ、素直に目を閉じた。どうしよう……この男が好きだ。
「ね。ナージ……触って。抱いてほしい」
「言われずとも。リュヌ王子」
「ふぁ……」
唇同士を擦り合わせ、甘噛みする。繊細な刺激に開いた隙間へと、舌が侵入してくる。巧みなキスにリュヌはあっという間に蕩けた。
ナージは服を脱ぎリュヌの服もすべて脱がせる。丸裸になった気恥ずかしさはあったものの、素肌をくっつけ合うのは気持ちいい。
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