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自然と目尻から流れていた涙を舐めて掬い取ってくれる。その仕草に愛を感じて、涙が止まらなくなる。きっとこんなに近くに感じる存在……二度と現れないだろう。
「泣かないでくれ……」
「んっ、ンナァ……なーじ……だしてっ。あ、ナカに……」
「あぁ。一緒にいこう、な。リュヌ……」
自ら舌を差し出すように唇を重ねた。器用に身体を折って覆いかぶさってくるナージの髪がさらさらと顔に当たるのが心地いい。
黒くても、月明かりを通す優しい檻だ。視界にはナージの顔しか入らない。興奮に潤むグレーに、リュヌの月色が映り込んで明るく見えた。
「う、ッん……いっしょに……」
ずっと一緒にいたい。この男に、どうしてここまで惹かれるのかわからなかった。フェロモンが合うのかもしれない。ただの一目惚れだとしても、リュヌはどこか運命的なものを感じていた。
彼ならリュヌを幸せにしてくれそうだ。外見だけじゃなく、内面も愛してくれそう。自分が一国民であれば叶ったかもしれないのに――胸に浮かぶのは、叶わないと分かっているからこそ幸せな想像だった。
熱い息を交わす。与えられる快感を全身でナージに返すと、倍になって返ってくる。それを繰り返す。リュヌはナージとひたすらに快感を追い、しばし言葉を忘れた。
胸にはいっぱい想いが満ちていたし、身体の中もナージに満たされている。口に出さずとも、伝わってしまえばいい……リュヌはひとりの男として、ナージに恋をしてしまったのだと。
リュヌの望みを、仕方ないなぁと叶えてくれる人。リュヌが王子だと分かっても、態度を変えなかった人。あぁ、好きだ。
「俺も好きだ。リュヌ、君が愛おしい……!」
都合のいい幻聴が耳に届く。人生で一番しあわせで、現実味のない瞬間。
「……ぁっ。も、いく……!〜〜〜〜〜っ!!!」
「く…………ッ」
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