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眉が濃く目との距離が近い。あまり見たことのない顔立ちかもしれない。何より背が高いし、太くはないが身体に厚みがある。強そうな雰囲気を端々から感じて胸がキュンと跳ねた。髪は濡羽色で、リュヌとは正反対の色だ。
フードを被るように言ってくるから、リュヌは「ん」と男に頭を差し出した。お世話させてあげてもいいよ?という親切心からの行動だ。一瞬の間を置いて、そろそろとフードが被せられる。
これだけサービスしてやったのだから早く食べたい。行こう、とマントを引っ張ると方向が違っていたようで「はぁ……そっちじゃない」と諦めた様子の男に手を引かれて裏路地を歩いた。
馴染みの店だという場所は人気のなさそうな酒場で、目つきの鋭い店主がいた。
「よぉ。今日は……情報を買いに来た訳じゃないらしいな」
「あぁ……場所を貸してくれ」
「上か?」
「こっちだよ!」
リュヌはきょろきょろと店内を見渡した。お忍びで来たことのあるレストランとは全然違う。言うなれば、古くて暗い。でもなんだか、大人の香りがした。
フードが取れそうになって手で抑える。カウンターに案内されて椅子に腰掛けるとマントの下から尻尾が少し出てしまったが、暗いから色までは分からないだろう。
リュヌが座ったことを確認した男が「待ってろ」と言い残し立ち去ろうとするので、リュヌはまたマントの端を掴んで止めた。男のフードが取れそうになって、慌てて彼は立ち止まる。
「誰を待っていればいいの」
「ちょっ、掴むなって!え?」
「名前。教えてよ」
「あー……ナージだ」
「ナージ!」
「なっなんだよ」
「お肉!早く!」
その男……ナージは「ほんと子供じゃねーか」などと呟きながらもようやく店から出て行った。後ろ姿をチラと見て、何の獣人かなぁと考える。
マントの背中側が少し膨らんでいて、けれど膨らみはその一点だけだから尻尾は長くなさそう。熊かな?顔も男臭いのに整っていて本当に好みだ。
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