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五
それから約半年たった、ある日のこと。
その日は祝日で、優の両親は外出していた。一緒についていきたい気持ちもあったが、優にはやりたいことがあり、家に残った。優は最終章に突入した長編小説の仕上げに取り掛かる予定だったのだ。誰もいないリビングのテーブルにノートを広げ、何も飲まず執筆に没頭していた。部屋の中は静寂に包まれていた。
しかし、すぐにそれは破られてしまった。
〈ピンポーン〉
インターホンを聞き、優は顔を上げた。今日は宅配なんて頼んでいない。一体誰なのだろう。優は居留守をしようとも考えたが、何か嫌な予感がして、廊下を小走りで駆け抜け、ドアを開けた。
「空くん……?」
そこには、空がいた。でも、明らかに様子がおかしかった。
「何があったの?」
久しぶりに会う空の顔は、涙でべしょべしょだったのだ。
「……」
空は何も答えない。
「とりあえず、中にはいる?」
そういうと、空はコクリと頷いた。
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