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「……どれくらいの期間、外国で暮らすの?」
「うーんとね、十年くらい」
「そんなに!?」
優には想像できなかった。
自分がもし突然そんな状況に陥ったら、どうなってしまうんだろう。
「でも、ずっといるかどうか分からない。だってここに来たときも、五年くらいいるって言ってたけど、結局半年だったから」
「そう……」
優は相槌を打つことしかできなかった。
空は残っていたサイダーをごくりと飲んだ。
沈黙が、重たかった。とにかく何かを言おうと口を開きかけたとき、空が先手を取った。
「おねえちゃん。短い間だったけど、今までありがとう」
優はその言葉を聞いて、妙なひっかかりを感じた。でも、その正体が何なのか分からない。
「……こちらこそ」
ありがとう……。優の言葉は聞こえるか聞こえないかの調子で、リビングにか細く響いた。
そのとき、優はふと『ぼくとヤドカリは似てるんだ』という空の言葉を思い出した。
——あぁ、そういうことか。
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