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空は小さな声でそう言うと、隣室との区切りになっているプラスチックの衝立の下から、小さな手をぴょこっと出した。優は衝立まで歩き、その手にヤドカリを乗せた。
「……びっくりさせて、ごめんなさい」
「いえいえ! いい刺激になったし、へっちゃらよ」
「……それと、引越しのあいさつのとき、逃げちゃってごめんなさい……」
「大丈夫だよ、気にしないで」
優は柔らかい声で言った。
「……ヤドカリ、捕まえてくれてありがとう」
空は頭を下げたのか、ゴツっと何かが薄い壁にぶつかった音がした。
「これ、飼ってるの?」
「……うん」
「そうなんだ」
「……ヤドカリってね、ぼくに似ているんだ」
「はい?」
優は突然放たれたその不思議な発言に面食らった。
「どっ、どういうことなの?」
「……ないしょ」
てへへっと笑うと、その子は部屋に戻って行った。
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