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 数日後の夜、優は未だに小説のアイディアが思い浮かばず悩んでいた。すっかり行き詰ってしまったので、少し息抜きをしようと思った。サイダーを片手にベランダに出て、プラスチックの椅子に腰を下ろす。冷たい夜風が頬を撫でる。ふと見上げると月が雲に隠れていた。今日の夜空はなと考えていると、隣から小さな声が聞こえてきた。 「おねえちゃん、いるの?」  聞き覚えのある声だった。 「もしかして、空くん?」 「うん」  優は思わず足もとをスマホのライトで照らした。でも、今日はあの生き物はいない。それなのに、なぜか空はそれきり黙り込んでしまった。 「……」 「……」 「……ヤドカリは元気?」  優は尋ねた。 「……うん」  またもや沈黙が訪れる。優は何を話そうかと迷った。 「……空くんは、ヤドカリが好きなの?」 「うん」 「わたし、ヤドカリについて詳しくないから教えてほしいな」
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