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「私は……」
「天音さんもわかってますよね?Only Flowerにとって、ハピネスウェディングがどれだけ大事な取引先なのか」
「……」
「近々、柊木社長が企画するプロジェクトに我が社も融資することは決まっていますが白紙になる可能性も……今後、Only Flowerに仕事を依頼しないかもしれません。」
「……」
「あなたの返事次第では、変わる可能性がありますけど……どうされますか?」
……昔からそうだった。
ほしくてほしくて
たまらなかったものを
ようやく手に入れたとしても
妹に取られてしまい私のものにはならなかった。
昔から
手放すことや
諦めることに
なんの躊躇いもなかったはずなのに……
拓さんだけは
手放したくないと思う私がいる。
でも
私が吉岡さんの
条件を飲めさえすれば……
「……自分の権力を振りかざして、弱いものいじめすることほど惨めなことって無いわよね。私、そういう女って、虫酸が走るくらい大っ嫌いなのよね」
聞こえてきた
声に自分の自信の無さから
俯いていた顔をゆっくりとあげれば
そこにはキリッとスーツを着こなす女性がいた。
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