デート

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瞬のデートプランをいちいち反論してくる速川。瞬は大きくため息をつき言った。 「分かってないなぁ。好きな女には名前で呼ばれてぇの! 全部言わせんなよ…」 すると速川は少し間をあけた後、照れたように訊いた。 「分かった……じゃ、瞬くんでいい?」 「ふふっ、まっいいか」 大型ショッピングモールの駐車場に車を停め、車の鍵を速川に返して瞬は速川の右手を取り指を絡めて繋ぐ。 「じゃ、行こう」 手を繋いでエスカレーターに乗り、ズラリと並ぶ店を次々に見て行く。 「見たい店があったら、入っていいよ」 「うんっ」 時々、速川が「見たい!」と言って指さし、一緒に店内を回る。速川が選ぶ服はどれも襟があり、ディスプレイしてある胸元が大きく開いている服や鎖骨が見える服を見ようともしない。 (ん…? 何かこだわりがあるのか? 必要以上に胸元や鎖骨まで隠れる服ばっかり…) 気に入ったものを店員に言って試着させてもらうが、試着室に入って速川自身で確認し、元の服に着替えて出て来る。 「あれ? 俺にも見せてくんないの?」 「あ、う、うん…」 「じゃ、次のデートで見るしかねぇな」 「えっ……次のデートって…」 「だって、今見れねぇなら、そうなるだろ?」 「あ……」 「いいよ。買っておいで…」 「うん…」 速川はレジに向かい会計を済ませる。 瞬は速川のそばで待ち、会計が終わると買ったものを受け取り、速川の手を繋いだ。 「何かお腹すいたな。さくらさんは何が食べたい?」 「あ、うーん。和食がいいな」 「じゃ、上にあがってご飯食べよ」 「うん…」 エスカレーターで上にあがり、飲食店を見て回る。和食の店を回り、大きな海鮮丼が目を引く店に入った。 向かい合わせで座り、2人は大きな海鮮丼を注文する。しばらくして運ばれて来た海鮮丼は、瞬の顔もスッポリ隠してしまうほど大きなどんぶりで、8種類の海鮮がたっぷり乗っていた。 「いただきまーす!」 2人で手を合わせて言い、食事を始める。 速川は細身の体型だが、ご飯はよく食べる。営業は体力勝負と言い、食事だけはしっかりとっていた。速川よりも遥かに背も体格も大きい瞬と同じ量を食べるのだ。 (美味しそうに食べるな…) アッという間に完食した2人は温かいお茶でひと息つき、席を立ちレジに向かった。勘定票を出し、瞬が財布を出すと速川が止める。 「私が払うよ」 「いや、俺が払うよ。美味しいもの食べさせたかったんだ」 キャッシュトレーに一万円札を出し、会計をしてもらって釣りを受け取り財布にしまって店を出た。 「ありがとう。ごちそうさま。すっごく美味しかったね」 そう言って、速川が満面の笑みを見せた。 「ふふっ、喜んでもらえてよかった。ほんと、美味(うま)かったな」 (ここでその笑顔かよ……反則だろ。くそぉ……抱き締めてぇ…)
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