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速川の手を繋いで、2人は雑貨店を見て回る。あれこれ便利グッツを手に取り、2人で驚いたり感心したりしながら次の店に向かった。途中、女性下着店が目に入り、瞬はゆっくり歩き店内を覗くようにして進む。
逆に速川は歩くのを速め、瞬を通り過ぎ少し先を行く。繋いだ手を速川が引っ張って振り返る。
「こらぁっ!」
「ちょっと、さくらさん、ちょっとだけ」
速川の手を引っ張り返し、体を反らせて下着店の前で足を止める。
「ダメッ! 瞬くんには必要ないでしょ!」
「だけどさくらさんには必要だろ? 俺が選んであげる!」
「いいっ! ! 今日はいいから、ほらぁ! 行くよ!」
速川はそう言って瞬の手を引き歩き出す。
「えぇぇぇ! ! いいじゃん! 絶対さくらさんに似合うの選ぶのに…」
渋々、瞬は歩き出す。速川は恥ずかしそうに照れながら言う。
「わ、私はクレープが食べたいの!」
「ちぇっ! またそのうち…」
「そのうちはありません!」
「えぇ! あるって! 絶対、またさくらさんとここに来てやる…」
瞬は後ろ髪を引かれる思いで店の前を通り過ぎ、速川と並んで歩く。
「もうっ、ほら、1階のクレープ屋さん行こ」
「うんっ」
2人はエスカレーターで1階に降り、和菓子店やケーキ店が並ぶ中にあるクレープ屋に着き、店の前で貼り出された40種類のクレープの中から食べたいものを選ぶ。
「うーん、どれも美味しそうで迷う…」
いつも判断が早く食事の時もあまり迷う事がない速川だが、珍しく本気で悩んでいた。その姿が新鮮で、瞬はニコニコしながら速川を見ていた。
「何?」
「ふふっ、ううん。可愛いなぁと思って」
「いつも可愛いって言ってくれるけど、もしかしてバカにしてる?」
速川がスネたように口を尖らせて横目でニラんで言う。
「そんなわけねぇだろ! 俺は本気でさくらさんの事、可愛いと思って言ってる!」
真剣にそう言うと伝わったのか、速川は顔を赤くして「ありがと」と礼を言った。
「ふふっ、で? さくらさんはどれで迷ってるの?」
瞬がそう尋ねると、速川は指をさして説明する。
「あの、イチゴ&ピーチホイップクリームとバナナ&キウイホイップクリームチョコがけ…」
「じゃ、2つ注文して分けよ」
「えっ…」
「あのすみません! 注文いいですか?」
瞬は店員に声をかけ、速川が言っていた2種類を注文した。会計を済ませ、しばらく待っていると、ホイップクリームがたっぷり入ったクレープが2つ出て来た。瞬が2つを受け取り、速川に見せて言う。
「さくらさんは、どっちから食べる?」
「うーん……イチゴ…」
「じゃ、はいっ!」
速川に『イチゴ&ピーチホイップクリーム』を渡し、2人はそれぞれひとくちずつクレープを食べた。
「ふふっ、おいしっ!」
満面の笑みで速川が言い、瞬も笑顔で答える。
「うんっ! 美味いな!」
「瞬くん、ありがと!」
「ふふっ、いいえ」
瞬は周りを見渡し速川に言う。
「だいぶん人が増えて来たから、そこから外に出て、外で食べよう」
「うんっ」
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