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「ちょっと……デートが楽しくて、はしゃいじゃった」
笑顔を見せる速川の手を取りぎゅっと握って、瞬は立ち上がり速川を抱き締める。
「俺も楽しかった。またデートしてくれる?」
「……考えとく…」
「ふふっ、断られなかったな。よかった。さくらさん……もう一回、キスしていい?」
「ダメって言ったでしょ!」
そう口では言っているが、表情は笑顔のままだ。瞬は速川の顎に右手を伸ばし下から支えて上向かせ、顔を近づける。
「嫌な事はしないって言ったでしょ?」
「でもさくらさん、今、嫌って思ってないよね…」
「そ、そんなの」
「さくら…好きだ…」
囁くように告げ、速川の唇にもう一度唇を重ねる瞬。速川の腰を引き寄せ、顎にあった手は速川の頬を包み、先ほどの一瞬のキスより長く唇を重ねた。
速川は抵抗する事なく、瞬の胸の中におさまり瞬のキスを受け入れている。少し唇を離し息を継いでもう一度重ね、瞬は舌で速川の唇をなぞり舌先を入れた。
ガシッ!
「いっ!」
「調子にのるな!」
舌先を速川に噛まれ口を押えている瞬に、仕事の時の速川が現れ怒る。
「ん……ごめん。調子に乗った……イケるかなって思ったのに…」
「急に呼び捨てにしたから、びっくりしただけだから!」
「ふふっ、ほんとに? 気持ちよかったんじゃないの?」
「バ、バカな事、言ってないで、ほらっ、もう帰るよ。疲れちゃった」
「はいはい…」
瞬は速川の手を繋ぎ、駐車場へ向かった。来た時と同様、瞬が運転席に乗り、速川は助手席に乗ってシートベルトを締める。
「さくらさん、シート倒して横になってていいよ」
「うん。ありがと…」
(ちょっと疲れさせちゃったな……大丈夫かな?)
シートを倒して横になり、目を閉じて休んでいる。
「さくらさん、大丈夫? 無理させた?」
運転しながら瞬が声をかける。
「ううん、大丈夫。ほんと久しぶりにはしゃいだから、体力使っちゃっただけ。少し休んだら治るよ」
「ほんと?」
「うん…」
「自宅まで送ろうか?」
「ううん。待ち合わせ場所からも近いし、瞬くんは電車でしょ。待ち合わせ場所でいいよ」
(無理に自宅に行くのも悪いかな? 余計に休めないか……早く帰った方がいいか…)
「分かった。じゃ待ち合わせ場所に行くよ。そこから帰れる?」
「うん、大丈夫」
「無理すんなよ。気を使う事もないから、して欲しい事言って…」
「ありがと。大丈夫、帰れるから」
「そう? 分かった。じゃ、ちょっと急ぐな」
「うん…」
瞬は安全運転で待ち合わせ場所へ急ぐ。朝から手を繋いで色んな店を回り、営業で回る時より歩いている。今日の方が体力を使ったはずだ。少しでも早く自宅に帰り、体を休めさせた方がいいと瞬は焦っていた。
待ち合わせ場所に着き、瞬は車から降りて速川に運転席を譲る。
「今日はありがとう。楽しかった。じゃまた明日」
「俺も楽しかった。また明日。気をつけて、ゆっくり休んで」
「うん…」
瞬は速川の車を見えなくなるまで見送り、すぐ近くの駅に向かった。
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