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衝撃の告白
デートをした日から、瞬に対して速川の言葉や態度が優しくなった。冷たい態度や素っ気なかった言葉は無くなり、笑顔を見せるようになって、少しずつ速川自身の事を話してくれるようになった。
残り2週間の研修期間中、移動時間や休憩時間にお互いの好きなものや好きなこと、してみたいことや将来の夢などを話した。初めの頃と比べると2人の距離はかなり縮まり、速川は瞬に心を開いているように思えた。
そして研修最終日。
4月の第四金曜日。明日からゴールデンウィークになり10日間の大型連休に入る。休暇が明ければ、瞬は1人で営業先を回る事になる為、先方にも改めて挨拶に回った。
夕方、営業先を回り終えて速川は社に戻る途中、2人が初めて出会った公園に寄った。公園のそばの駐車場に車を停め、2人は公園へ入る。
「すっかり桜は散って、葉桜かぁ…」
瞬が桜の木を見上げて言う。瞬の隣で同じように桜の木を見上げ、速川が言った。
「桜は本当に一瞬だね。桜が咲く頃って、風も強くて雨もよく降るし、1年かけて咲くのに、すぐに散っちゃう……何か悲しいね…」
「そうだな。でも散るのは、次の準備を始める為だろ? また1年栄養を蓄えて、今年よりももっと綺麗に咲く為に……そう思うと、来年が楽しみに思える」
そう言って瞬は、悲しそうな顔をする速川に微笑んだ。
「そうだね……また来年綺麗に咲いて、次の年もまたその次の年も咲いて、そうやってずっと咲き続けていくんだね」
「うん…」
「いいな……私もそうなれたらいいのに…」
速川は微笑みながら桜を見上げ、変な事を口にした。その言葉の意味が分からず瞬は訊き返そうと思うが、速川の穏やかな横顔を前に訊く事が出来なかった。
2人は車に戻って少し話をする。
「明日からゴールデンウィークかぁ。先輩はどこか出かける予定はあるんですか?」
「あぁ、旅行とかはないけど、実家に帰るかな」
「そうなんですか。俺も実家帰るか…」
「友達と遊びに行かないの?」
「あぁ、行きますよ。でもアイツらも彼女がいたりするからなぁ……先輩、あいてる日でいいんで、またデートしません?」
「あ、うーん。デートかぁ……」
「ダメですか? 先輩の行きたい所とか、ほらっ、したかった事とか、一緒にしませんか?」
すると速川は笑顔でこう答えた。
「やめとく。瞬くんとのデートは楽しいけど、もう私に関わらない方がいいよ。研修も終わって、これからは別々で仕事するし、もう私の事は」
速川の腕を掴んで引き寄せ、瞬はぎゅっと速川を抱き締める。
「そんな事言うなよ。俺は諦めねぇって言っただろ」
「だけどね……本当の私を知ったら……きっと瞬くんも……彼と同じように…」
「彼と同じ? それって元カレの事?」
「そう。でもそっか……諦めてもらうには、本当の私を見せた方がいいのかも…」
そう言って速川は瞬の腕から離れ、体を瞬に向けたままスーツの上着を脱ぎ、シャツのボタンを上から順に1つずつ外し始めた。
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