知る勇気

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知る勇気

休暇に入ると、速川はすぐに実家へ向かった。帰る前に瞬へ連絡をくれたのだ。瞬も初日と翌日の2日間は友人と約束があり、遊びに行ったり食事をして楽しんだ。 それからは実家に帰るのをやめ、リビングでノートパソコンを開き、色々と調べ始める。 「さくらが少し話してくれたけど、詳しい事までは分からないな。そもそも先天性心疾患から調べてみるか…」 先天性心疾患と検索すると、詳しい内容が書かれたものがズラリと出て来た。病院や医療関係者による記事をクリックし、瞬は内容を読み始める。 『先天性心疾患』 生まれつき心臓や血管の形状が正常とは異なることで、心臓や血液の働きに障害が起きる病気のこと。およそ100人に1人、年間で1万人が生まれている。 先天性心疾患の種類は多岐にわたり、疾患の重症度は人それぞれで、自然に治ってしまう軽症の方もいれば、複数回の手術を受けなければならない重症の方もいる。 「さくらが生まれて3ヶ月で手術をしたって事は、それだけ重症だったって事か……100人に1人……さくらのファロー四徴症って……一体どんな症状なんだ? なんか説明が難しいって言ってたな…」 次はファロー四徴症で検索してみる。すると同じようにズラリと記事が出て来た。記事をクリックし、ファロー四徴症の症状を読み始める。 『ファロー四徴症』 先天性心疾患が生まれる1万人あたり、出生率は2.8から4.1人(3600人に1人)、ファロー四徴症に肺動脈閉鎖を伴ったものは1.2人で合計5.3人となり先天性心疾患の約5%くらいといわれている。 チアノーゼをともなう先天性心疾患では最も頻度が高く、代表的な疾患。チアノーゼとは、酸素不足のときに皮膚や粘膜、爪や唇が青紫色になる状態のこと。 胎児期に心臓が出来上がる過程で、肺動脈と大動脈と呼ばれる2つの大きな血管を分ける壁がうまく形成されなかったことで起こる。そして4つの特徴を持つ。 1、左右の心室(しんしつ)を分ける心室中隔(ちゅうかく)という仕切りの壁に大きな穴が開いていること(心室中隔欠損(けっそん)) 2、正常の場合は左心室(さしんしつ)に繋がっている大動脈が、左右の心室にまたがっている状態(大動脈騎乗(きじょう)) 3、肺へ血液を送る肺動脈の右心室(うしんしつ)の出口(漏斗部(ろうとぶ))が、肺動脈と一緒に狭くなること(肺動脈狭窄(きょうさく)・漏斗部狭窄) 4、狭窄により肺動脈に血液が送りづらくなるため、右心室に負担がかかることで起こる(右室(うしつ)肥大(ひだい)) 特徴を読んだ後、瞬は正常な心臓の働きを確認する。 正常な心臓は、握りこぶしくらいの大きさで、4つの部屋から出来ている。心臓の右側上部を右心房(うしんぼう)、下部を右心室(うしんしつ)といい、同じように左側上部を左心房(さしんぼう)、下部を左心室(さしんしつ)という。 右側の右心には、不要になった二酸化炭素や老廃物を受け取った血液を回収し肺へ送る役割があり、左側の左心には、肺で酸素や栄養素を含み綺麗になった血液を全身へ送る役割がある。上部の右心房と左心房は心房中隔(しんぼうちゅうかく)という壁で仕切られ、下部も同様に右心室と左心室を心室中隔(しんしつちゅうかく)という壁で仕切られている。 又、右心房には右心室へ血液を送り出す(べん)があり、右心室から肺動脈へ送り出す弁もある。左も同様で、左心房から左心室へ送り出す弁があり、左心室から大動脈へ送り出す弁がある。これらは逆流することはない。 全身を巡って汚れた血液は、右心房に入り右心室へ送られる。右心室から肺動脈を通って肺に到達し、肺で酸素や栄養素を含み綺麗な血液となって左心房へ戻ってくる。左心房から左心室へ入り、左心室から大動脈を通って全身に血液が送られるのだ。 これらは一方通行で行われ、決して、回収した血液と全身に送り出す血液は混ざり合うことはなく、心臓が動いている限り一生続く。
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