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正常な心臓の形状と働きを改めて確認した上で、もう一度、ファロー四徴症の特徴を置き換えてみる。
「まず、左右の心室を仕切っている壁に大きな穴が開いてる。これで全身を巡って汚れた血液と、酸素や栄養素を含んで綺麗になった血液が混ざるのか。それだけでも大きな問題だな。効率よく全身に酸素や栄養素が回らなくなる…」
壁に穴があいた状態を想像してみて、すぐにでも塞ぎたいと思う瞬。
「それで次は、綺麗な血液を全身に送るための大動脈が、左右の心室にまたがってるって……右心室の汚れた血液が左心室の綺麗な血液と一緒に全身に流れるだろ……だから! 一緒になっちゃダメなんだって!」
この2つの特徴でかなり悪循環であることがわかる。
「それでまだあと2つあるんだよな。えっと3つ目は、右心室から肺動脈へ送り出す弁と肺動脈自体が狭くなってるのか。てことは、左右の血液が混ざり合って、右心室の血液は大動脈と肺動脈に送り出されていて、肺動脈が狭いことで、肺に血液が回らなくなっているって事だよな。あっ! だからチアノーゼが現れるのか。酸素が足りないんだ……」
生後1ヶ月から2ヶ月頃になるとチアノーゼの症状がみられるようになり、成長とともに症状は目立つようになってくる。とくに、泣いた後や熱を出した時の刺激でチアノーゼ発作(無酸素発作)と呼ばれる症状を起こすことがあり、チアノーゼとともに呼吸困難がみられる場合がある。症状が長時間に及ぶと命に関わってくる。
「で、4つ目は、肺動脈が狭くなっているけど、右心室は血液を送り出そうと必死に動く訳だ。それで右心室が鍛えられて大きくなるのか……なるほどな。そりゃあ、手術するしかないよな。手術って、どんなことをしてるんだ? 正常の心臓へどうやって戻すんだ?」
瞬はファロー四徴症の手術で検索し、その手術内容を見て驚く。
「心室の壁の穴を塞いで、右心室から肺動脈へ送り出す弁と肺動脈を広げるのか…自分の肺動脈弁を残す方法と、パッチと呼ばれる膜をあてて拡大形成する方法、人口血管で右心室から肺動脈へ通路を作成する方法か…3つの方法があって、さくらは人工血管が繋がっているって言ってたっけ…」
手術の内容は図で書かれており、とても分かり易くなっていた。速川はこの手術を生後1歳半なる頃にしたと言っていたが、生後3ヶ月で一度目の手術をしたのは、チアノーゼが強い場合に行われる、鎖骨下動脈と肺動脈をバイパスするブラロック・トーシッヒ短絡(シャント)と呼ばれる手術をしたのではないかと思われた。
だがその手術は、生後3ヶ月の乳児。成長を待って生後1歳半頃に手術といっても、乳児の心臓の大きさは鶏卵大なのだ。そんな小さな心臓で血管も当然だが細いはずだ。そんな手術を行った医師を、瞬は尊敬し称賛した。
「そんなすごい事をしている医師も、それに耐えたさくらも、本当にすごい。こんなの大事にしなきゃ罰があたるぞ…」
改めて速川の病気を詳しく知り、現在病院へ通院していない事への不安を抱いた。
病院探しをしている中で、ファロー四徴症に関する記事をいくつも目にする。先天性心疾患はその種類だけでも数多くあり、心臓が出来上がる際に異常が起こるもので、人それぞれ問題点が異なり症状も治療も様々だ。
だからこそ専門で診察出来る医師が必要で、成人してからも安心して治療をした心臓を診てもらえる医師が必要なのだと分かった。
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