知る勇気

3/8
前へ
/150ページ
次へ
その日から休暇中はずっと、パソコンで病院探しをしつつ様々な記事を読んだ。小児循環器専門医による動画での先天性心疾患の話や、ファロー四徴症の話など図解説で聞き、より詳しく知る事が出来た。 毎日、専門の医師達の動画や記事を読み、ぞれぞれの医師達の意見や見解を知っていく。この数日で、先天性心疾患やファロー四徴症について、どういった疾患でどんな症状があり、疾患の状態によってどのような治療をするのかを知った。 そして成人先天性心疾患を診てもらえる病院もいくつか見つけ、病院名と医師の名をメモに取り、次に速川と会った時に伝えようと思う瞬だった。 (よし。これでさくらを診てもらえる…) 病院も見つかり安心した瞬は、そのあとも様々な記事や動画を検索しては見て、病気について勉強を続けた。その中で『ファロー四徴症術後』という動画を見つけた。 「術後…? 手術治療をしてから、その後って事?」 瞬は動画を再生してみる。 すると動画では、根治術(こんちじゅつ)の手術方法によっては、成人になってからも治療が必要になる事があり、定期的な通院で検査を受ける必要があるという事だった。根治術というのは、正常の心臓や血管に戻す手術、又はそれに近い修復手術のことだ。 ファロー四徴症に限らず、先天性心疾患で生まれた患者が成長した、成人先天性心疾患としての問題点が取り上げられていた。 速川も言っていた通り、小児循環器科から循環器内科に担当が変わり、医師も変わることで循環器内科で成人先天性心疾患をきちんと診察出来る医師が少ない事が問題になっていた。 それによって患者は、きちんとした検査や診察が受けられず不安になる事もあり又、学業や仕事、結婚や子育てなどで通院しなくなってしまう事があるという。 「さくらもそうだからなぁ……今は元気かも知れないけど……やっぱりきちんと検査はしておかないと不安だよな…」 それと先天性心疾患の手術は、まだ子供が幼い頃に行われているため、親がきちんと話さなければ、本人が自分の病気や受けた手術の事を分かっていない場合があるという。 最後に一番の問題点は、具合が悪くなって病院に行った時には、かなり心不全(しんふぜん)が進んでいるという点だ。心不全とは、心臓の機能が低下することによって、心臓が全身の各臓器に血液を十分に送り出せない状態のこと。 『心不全』と聞いて、瞬は急に不安になってくる。動画を止めて、ソファーの背もたれにもたれ天井を仰ぐ。 「さくらは、このこと、分かってんのかな……はぁっ…」 速川の顔を思い浮かべ、大きく息を吐く。 「さくらに……会いてぇ…」 天井から視線を下ろし、テレビ横のカレンダーに向ける。 「今日は5月1日か……まだ帰って来てないよな…」
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

726人が本棚に入れています
本棚に追加