知る勇気

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いつ速川が戻って来るかと考えていた時、ローテーブルの上で携帯が鳴った。瞬は携帯を取り画面を見て慌てて電話に出る。 「もしもし! さくら? !」 《う、うん。どうしたの? びっくりした…》 「あ、ごめん。今、さくらの事、考えてたから……もしかして伝わった?」 《えっ、ふふっ、そうかな。瞬に電話しなくちゃって思った》 「ふふっ、そっか。てことは、帰って来たの?」 《うん。さっき家についたよ》 瞬は、ふと壁掛け時計を見る。現在午後2時20分になったところだった。 「早かったんだな。ゆっくり出来た?」 《うん。久しぶりの実家でのんびり寛いで来たよ。それで、私の担当だった小児循環器専門医の先生の連絡先を教えてもらったよ。その先生に紹介状を書いてもらって、次に行く病院に紹介状を持って行くといいって…》 「そっか。俺も色々調べたよ。病院もいくつか見つけた」 《色々調べたって、病気の事? 病院も見つけてくれたの?》 「うん。ファロー四徴症がどんな症状なのか、どんな手術をしたのか、よく分かった」 《瞬……ありがと…》 「礼を言われるような事じゃない。ただ俺は、さくらの事をもっと知りたいだけ…」 《…っ…瞬…っ…》 電話の向こうで速川の声が涙声になっている。速川の声を聞いて余計に会いたい気持ちが膨らむ。 (会いたいな……でも帰って来たばかりだし、疲れさせるかもな…) そう思い、会いたい気持ちを抑え、瞬は尋ねる。 「じゃ、デートはいつにする? 明日はゆっくりした方がいいよな。3日から5日にした方がいいか…一応、6日の月曜日まで休みだけど、仕事の前日はのんびりした方がいいだろ? どうする?」 すると速川は少し沈黙した後、呟くような小さな声で言った。 《今……会いたい…》 思いがけない速川の気持ちを聞いて、瞬はスッと顔を上げ訊く。 「いいのか? 疲れてない?」 《うん…大丈夫…》 「じゃ、俺がそっちに行くよ。近くに公園とかある?」 《あるけど……瞬、家に来ない?》 「えっ、行っていいのか?」 《うん。私もその方が助かるし、ゆっくり出来るでしょ》 「分かった。じゃ今から行く。マンションの前に着いたら連絡するな」 《うん…》 電話を切ってすぐに出かける準備をした。速川を通わせる病院のメモを鞄に入れ、瞬は家を出る。 駅に向かい電車で、速川に教えてもらった住所のマンションに向かう。マンションに行く途中、駅前でお土産にケーキを2つ買って行く。 マンションの前に着き速川に連絡すると、しばらくしてマンションの正面玄関から速川が出て来た。 「瞬! 早かったね!」 「おぅ! 俺も会いたかった!」 そう言って、瞬は近づいて来た速川をそのまま抱き締めた。
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