第1話 デブ meets デブ。

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第1話 デブ meets デブ。

   ある平日の昼下がり。  僕こと田中タカシはあることで悩んでいた。  中学を登校拒否中の僕は、この日も学校には行かず、いつもの本屋へと出かけた。  クーラーの効いた店内は快適だった。  子どもの頃から、僕は太っていることを理由にいじめられている。  それがストレスで更に太り、性格は暗くなった。  自分で言っちゃうと、陰キャデブ中学生。  それが僕。  店内には僕の他にあと一人客がいたのだけど、その人物の体型は僕と同じデブ体型で、勝手に仲間意識。  それからついつい立ち読みが捗ってしまい、小説の単行本を丸々1冊読み切ってしまう。  そろそろ帰ろうか……  と考えて店の外に出たら。  すぐ前の交差点の信号を渡りきれないお婆さんがいた。  お婆さんの荷物が多い。  そしてここの信号は短い。  この交差点では、この様な老人が困っているのを割と見かける。  よく立派な人々がご老人を助けている。  でも今ここにいるのはお婆さんと僕だけ。  ――今回は、僕がお婆さんを助けるべき?  しかし僕は、お婆さんを助けるその一歩が踏み出せないでいた。  理由は、僕が太っているからだ。  陰キャデブ中学生の僕にお婆さんを助ける資格はあるのだろうか?  僕に助けられたら、お婆さんは嬉しくないのでは?  ……とマゴマゴしていたら、颯爽と現れた僕とは別のデブがお婆さんを助けてしまった。  さっきの店内にいたもう一人のデブだった。  別デブはお婆さんの手から重そうな荷物を3つは取り上げ、いっしょに交差点を渡り、そのままいっしょにどこかに行ってしまった。  もしかしたら、お婆さんの近くにある家まで行ってあげることにしたのか。  その一部始終を見守った僕は、まず安心して。  それから複雑な感情が襲ってきて、歩けなくなった。  だから、その交差点の付近に立ち止まったまま心を無にしていた。  ……それから、どれほどの時間が過ぎたのだろう。  さっきの別デブが引き返してきた。  その顔はやりきった感が溢れていて。  本屋に戻っていこうとしている見知らぬ彼に、僕は思わず声を掛けてしまった。 「僕と同じデブなのに、どうしてあなたはあんな(丶丶丶)行動ができるんですか?」 「は?」  彼は立ち止まり、僕をしばらく見つめた。  僕も彼を見た。  彼は、僕よりも年上の、高校生か、もしかしたら大学生という雰囲気。  そして、僕と違って「陽」。  デブではあるけど、僕と違ってガッシリしてもいる。  一見、同じデブと思ったけど、結構違う。  何より、自信を感じる。  彼は少し考えるようにした後、僕に言った。 「よかったらそこで話聞かせて。ジュースおごるよ」 ―――― 孫じゃないのにマゴマゴ(ボソッ)
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