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 そして結婚と同時にふたりは、木崎と前妻とのあいだにできた息子の(りゅう)を引き取った。そのためヨギちゃんは夜に気軽に出かけられなくなってしまった。  レストランの営業は夜9時まで。とはいえ、昔からの常連さんが酒を飲みながら居残ったり後片付けがあったりで、車で10分ほどの距離にある自宅に戻るのは早くて9時半、時には10時を過ぎることもままあるらしい。  竜はつい先日6歳になったばかりだ。今年の春から小学生になるとはいえ、当然ひとりにしておくことはできない。  結婚と、店が入居していたビルの建て替えを機に新装開店となった『レストラン・フーガ』は火曜が定休日だ。ヨギちゃんが飲みにいけるとすればその日しかない。それまで月に二、三度はともに夜の街に繰り出していた身としては少々物寂しさを覚えなくもないが、啓子とてどちらかといえば宅飲みのほうが好きだ。ただ、同居している西澤があまりアルコールに強くないのが小さな不満の種ではある。 「残業は、たぶんあっても1時間くらいかな」 『よかった。『鳥屯(トリトン)』に7時に予約を入れてある。西澤にも言ってある』  よく利用する焼き鳥メインの居酒屋の名前を出した。 「え、つーちゃんも? でもヨギちゃん、行けるの? 今日、金曜日だよ。店は?」 『いや、わたしは行かない。あのさ、啓子と西澤にちょっと頼まれてほしいことがあってさ。というか、話を聞いてやってほしいんだ』
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