留守番電話は蜜の味 ー ダイニングチェア探偵たち②

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「ちょっと……、コンビニ、行ってくる」  西澤(にしざわ)がわざとらしく目を逸らして言った。まるでそこにもうひとり、誰かいるみたいに。 「あ……、うん、気をつけて」  啓子(けいこ)の返事までには不自然な間があった。  年が明けて、1月もあと一日で終わる30日。時刻は夜の9時ちょうど。  この奇妙な儀式めいたものも明日まで。  西澤が玄関で靴を履く気配と、扉が開き、再び閉まる音を聞きながら、啓子は胸にひとりごつ。  西澤はコンビニへは行かないし、啓子はそれを知っている。そして啓子は知っていると、西澤も思っていることだろう。  この茶番も明日、1月31日で終わる。
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