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『美晴! 僕と結婚して欲しい』
『幹雄さん…』
事故で両親を亡くし、天涯孤独で生きて来た美晴にプロポーズしてくれたのは、のちに彼女の夫となる、松本幹雄(まつもとみきお)。
出会いは幹雄が美晴の働くホテル内のカフェの常連だったこと。勤勉で接客に定評のある美晴は、幹雄の理想だと言ってくれた。
『本当に私でいいの?』
『ああ。美晴しか考えられない。君のことは僕が幸せにする』
幹雄は地元の立派な家の跡取り息子だから、付き合えるだけでも奇跡だと思っていたのに、まさかプロポーズを受けるなんて。
(こんな私を大事にしてくれる幹雄さんやお義母さんとお義父さん…絶対にこの人たちのために頑張ろう)
結婚前にブライダルチェックを受け、跡取り問題も大丈夫と喜んでもらえた。
彼らと早く家族になろうと頑張ったけれども…。
結婚した途端に幹雄は豹変した。義理実家へ行っても自分の分の食事はなく、あからさまな差別を受けた。それでも認めて貰いたい一心で頑張った。子供さえできれば、愛してもらえると信じていた。
優しい義理両親も、夫も、結婚と共に失くしてしまった。それは自分に子供ができないせいだと彼女はいつも自分のことを責めていた。
(今月生理が来たこと、報告しなきゃ。また罵られるんだろうな…)
それを想像するだけで辛く泣けた。
美晴は零れた涙をぬぐい、もっと頑張らなきゃ、と自分を奮い立たせた。
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