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『詳細は別の方のプライベートにかかわる問題になるので発言を控えさせていただきます。ただ、美晴さんと同じようにお困りの方がいらっしゃるので、わたしはそのお手伝いをしています。たくさんの方と情報共有をして、わたしというアプリのデータベースを使ってサレ妻・虐げられ妻の皆様をサポートしています』
――さっき撮影して証拠を撮りましたが、相手の子は女子高生でした。犯罪ですよね。
『おっしゃる通りです。ただ、クズ男たちは社会の壁に守られています。会社・家庭という壁は厚く、容易に彼らの秘密へたどり着くことはできません。そのため証拠が必要です。彼らを断罪するには、彼らの犯罪を立証したり、社会的地位を揺るがすには確実な証拠が必要です』
(なるほど……。だからなんでも証拠なのね)
――ありがとう。引き続き頑張ります。
『またの証拠をお待ちしております』
美晴はアプリを閉じてスマートフォンを充電器に繋いだ。
それにしてもこのアプリは、いったいなにが目的で誰がどうやって作ったものだろうか。機械やアプリについてはまったく知識のない美晴は首をひねった。なにかメリットがあるのならともかく、美晴はこのアプリからただ恩恵を受けているだけ。
復讐アプリを始めてから実際に幹雄がクズであり、義母からいかに自分が不当に扱われてきたかがよくわかった。このアプリに出会わなければ、精神(こころ)を彼らに潰されていただろう。
問題をすり替え、子供を殺した理由を自分のせいにさせられ、絶望させられて、耐え切れずに死んでいたかもしれない。
美晴には生命保険が掛けられている。いつ死んでも誰も困らないどころか、むしろあのクズ一家は大喜びだ。もしかすれば天涯孤独な自分を選んで結婚したのは、辛辣にいじめてなぶり殺しにするためだったのかもしれない。
その考えに辿り着いた時美晴は納得した。最初から幹雄に愛はなく、松本家に自分の席は用意されていなかった。
唇を嚙みしめていると、美晴のスマートフォンが鳴った。義母だ!
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