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『初めまして。私、上原こずえです。仲良くしてね』
初めて会った時は、にっこり笑って挨拶をしてくれた。
『美晴って呼んでもいい? きれいな名前だね』
こずえは自分の名前をきれいだと褒めてくれた。
『ねえ美晴、お茶しに行こうよ!』
内向的な自分をいつも外に連れ出してくれた。
『結婚するの? おめでとう! 幸せになってね』
結婚を報告した時、いちばんに喜んでくれた。
『幹雄さんって素敵な旦那様だね。美晴がうらやましい~』
夫を紹介した時も笑顔だった。
『やっほー。美晴、元気? 赤ちゃんは順調?』
妊娠を告げたら喜び、身を案じてくれた。
『そんな……やっと授かったのに……美晴、辛かったね』
流産を報告した時は、一緒になって悲しんでくれた。
『それにしてもひどいね。もうあんな旦那捨てちゃいなよ!!』
幹雄のモラハラを相談すると、一緒になって怒り、離婚をすすめてくれた――
こずえとの思い出が走馬灯のように駆け巡る。全部、嘘だった。
彼女の笑顔に亀裂が入り、粉々に砕け散る音を聞いた。
涙が熱く、まるで血の涙でも流しているかのように感じられた。
こずえの裏切りは、美晴の心を深く、深く、傷つけた。
このまま立ち直ることができないほどに。
涙が、止まらない。
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