APP:04

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 普通に誰でも利用できるようなアプリで、ふたり、もしくは複数で秘密を共有するという特別な空間を提供しているように見せかけている。プライベートなチャットだと思ったら大間違いだ。裏で復讐アプリの運営側と情報を共有されているのだと思うと、背筋が寒くなる。 (でも、どうやってユーザーを特定するんだろう…)  美晴は疑問に思った。運営側は集めた膨大なデータの中から、どうしてこずえと幹雄のやり取りを抜き出すことができたのか。チャットを利用している人間はごまんといるはずなのに。いや、この『こずたん』と『みきくん』のやり取りはどう考えても上原こずえと松本幹雄のものだとわかるが、それをなぜ抽出できるのか。 ――質問があります。  美晴はチャットに聞いてみた。するとすぐに『どうぞ』と返事があった。 ――どうしてこのやり取りが二人のものだと特定できるのですか? 登録名や個人名で必ずしも一致するとは限りません。疑ってすみませんが、教えて欲しいです。 『結構です。立て続けの裏切りは心を闇に陥れます。いいでしょう。こちらの情報を提示します』  アプリが続けて回答を送ってくれた。 『こちらは、電話番号でご相談者・相手の情報を特定しています。電話番号には様々な個人情報が詰まっています。スマートフォンを登録する時に個人情報を書くことを思い出してください』 (電話番号――!!)  美晴は息を呑んだ。チャットは更に回答を寄こしてくる。 『名前、住所、年齢、生年月日、電話番号からこれだけの情報が紐づきます。さらにこの個人情報で様々なデータが判明します。出身地、勤務地、現在の住所などがわかります。同姓同名の方もいらっしゃいますが、電話番号に紐づいた個人情報から算出するものは、99.9パーセントの確率で一致します』 (それで最初に電話番号を聞いてきたんだ――!!)  
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