廃屋で歌う生首

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「なんでって、あそこで死体が見つかったでしょう」 「……死体……え、じゃあ、あの生首は……お化けでも見間違いでもなくて、……本物……?」  最後のほうは声がかすれて、言葉にならない。  愕然とした。  でも本物の生首なら、なおさら、それが歌うなんて……そんなこと…… 「え、あんた知らないの? ああでもそうか、あんた裏山の話大嫌いだったもんね、だから耳に入らなかったのか」 「知らないって、なにを……」  私は平静を装って、スプーンでスイカをすくう。 「あのころ、近所にアル中のお父さんと小さい息子さんがいてさ。  お父さんが酔っ払って、もうお酒を飲まないでっていつも言ってた息子に逆上して、ひどくせっかんして、あの炭焼き小屋に首まで埋めたらしいのよ。  ひどかったらしいよ、顔中強く殴られて血だらけで、地面まで血だまりができてたみたいでさ。埋められてからも殴られたんじゃないかって。  しかもその日は冬にしちゃ風が強かったもんだから、お父さん、帰る途中に飛んできた瓦が頭に当たって亡くなっちゃったのよ。  お酒も入ってたしね。救急車が来たけど、間に合わなかったみたい。  ただ、息子が酒やめろってうるせえから気合い入れてやった、とだけ言い残したって。  で、息子が家にいないって分かったんだけど、どこに行ったかなんて誰も知らないのよ。  まさか、山で首まで埋められてるなんて思わないから。  結局、見つかったのは一ヶ月後だったかな。  たまたま探検ものの動画撮りに来てた、もの好きの大学生のグループが見つけたのね。  土の上に首だけ出てるから、まるで生首みたいだったって。  もちろん男の子は餓死しちゃってたけど、小屋の中だったこともあって、せっかんの形跡や血だまりの跡は残ってたみたいでね。  身元が分かったら、そりゃあもうかわいそうだって話になって、……  ちょっとあんた、スイカ落ちてる」 終
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